ドラクエⅡ考察~英雄・ローレシア王子の人物像②

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 今回はローレ王子の人格形成に大きな影響を与えているに違いない、『呪文を使えない』について考察する。

 勇者ロトの直系にしてローレシア王国の王子として生まれたローレ王子にとって『呪文を使えない』事は大きなコンプレックスだった事は間違いない。
 ロト一族で王族なら呪文を使う為の教育、訓練はしてないハズはなく、それにも関わらず『呪文を使えない』のはローレ王子には魔法使いとしての素質が根本的に欠落しているとしか思えない。勇者としては致命的な欠陥を持って生まれたとも言える。
 呪文を使えない代わりに剣の才能がズバ抜けているというのは、あくまでも結果から見たプレイヤー目線である。ローレ王子の剣術はハーゴン討伐の旅に出てから実戦で磨かれたもので、旅立ち前の彼は『呪文を使えない』上に剣術も冴えない、落第勇者だったのだ。

【欠陥勇者の王子を支え育てた人々】
 しかし欠陥勇者にも関わらずひねくれず、プレッシャーと劣等感に押しつぶされず、よくまっすぐ育ったものだ。
 そんなローレ王子を支えた一番の人物は父王だろう。父王は勇者としての素質に欠陥のあるローレ王子をあえて王太子に指名した。『呪文を使えない』のは王としても勇者としても致命的欠陥ではないと考えたのだろう。逆境を乗り越え、強くなって欲しいと願ったのかもしれない。理由は色々考えられるが、幼少時のローレ王子は父王の信頼と愛情に支えられたことで情緒も安定し、素直で前向きな性格に育った。

 ゲーム中におけるローレシアの人々の台詞からもローレ王子がいかに愛されているかが窺える。ローレ王子は多くの人々に愛されて育ったのだろう。逆に王子自身の素直さや健気に努力する姿が人々の心を掴んだのだろう。とにかくローレ王子は『呪文を使えない』欠陥を抱えながらも、多くの人々の愛情を受けて真っ直ぐに育った。それが旅立ち前のローレ王子が持っていた王としての、勇者としての資質だったのだ。

【魔法は珍しい?】
 今度は視点を変えて、ドラクエⅡの世界において『呪文を使えない』のはどういう意味を持つのか考察してみる。
画像 右の画像はサマルトリアで得られる貴重な証言である。“なんと”である。この台詞から分かるのはサマルトリアで魔法が使える人間はとても珍しいということ。ローレシアから旅してきたローレ王子に対してこの話で驚かせようとしているので、ローレシアでも魔法は珍しいとも推測出来る。そういえばこの地方に現れる魔物で呪文を使えるのは“まじゅつし”とホイミスライムのみである。この地方では魔法は珍しいのだろう。

 では他の地方、いやドラクエⅡ世界全体の人間の魔法普及率はどうだろうか?
 けっして高くは無いだろう。
 何故なら魔法を行使するには“呪文を唱える”必要があり、その呪文の習得や魔法自体を使いこなす為の知識やスキルを身に付けるには、専門の教育や訓練を受けなくてはならない。日常の生活糧を得るのに精いっぱいな庶民にとっては魔法など必要は無いだろうし、そんな教育や訓練をするヒマがあったらもっと稼ぐ努力をするべきだ。 となると、魔法を身につけられるのは裕福なインテリ層に限られる。例えば王族、貴族。
 他に魔法が必要なのはカミに仕える聖職者。彼らは若い頃の修行の一環として僧侶の魔法を学んだのだろう。

 ドラクエⅢの時代、勇者と旅をした仲間の中で戦士、武闘家、商人、遊び人は基本的に魔法は使えない。簡単な魔法であってもちょっとした勉強や器用さで身に付く代物ではないらしい。それまでの職を捨てる覚悟で転職しないと魔法は身に付かない。逆に魔法使いと僧侶が他の職に比べ戦闘力で劣るのは魔法という専門スキルは他を犠牲にして、それ一本に絞って磨かないと身に付けられない程難しいものなのだ。
 よって剣と魔法を同時に扱える勇者や、僧侶と魔法使いの呪文を同時に習得する賢者がいかに特別な存在だと理解出来るだろう。

 ドラクエⅢといえば魔法スキルに関するパラメータに『かしこさ』というものがある。魔法使いは高く、戦士のそれは低く設定されている。まあ、確かに難しい呪文を覚える魔法使いは“賢い”だろう。
 しかし本来『賢さ』とは呪文の習得という狭い意味ではないはずだ。例えるならば小難しい理屈をこねるだけで役に立たない学者は本当の意味で賢いとは評価されないということだ。
 ドラクエ世界では熟練の戦士の戦闘での機転や駆け引きの巧みさなどというものは『かしこさ』として評価されない。何が言いたいか?魔法を使える者は使えない者を知性の面で明らかに見下しているということだ。
 見下している者とは誰か?そう、王族、貴族、聖職者らである。
 そう考えると『呪文を使えない』ローレ王子の彼らからの評価は『バカ殿』だと言っても過言ではない。

 魔法は貴き者たちにとって知性の象徴であり、下賤な庶民との決定的差の証明でもある。

 元々未開の蛮族に地であったサマルトリアやローレシアの民衆レベルでは魔法はそれほど重要ではないが、先進の文明国であるムーンブルクやラダトームと付き合う上ではやはり魔法は必要になってくる。また先進国のやり方に倣えば国を統治する上でのカリスマ性にもなる。それゆえサマルトリアは王子の教育には戦士技能よりも魔法技能の習得に重きを置いている。(後に剣の才能にも開花するが…)

【ローレシア父王の決断】
 『呪文を使えない』王子の誕生は小国ローレシアを揺るがす大事件だった。ローレシアは現地人との混血も進んでいるだろうが、政権中枢にはアレフガルド系やムーンブルク系の者が多くを占めていただろう。彼らの価値観では『呪文を使えない』王子を受け入れるのは難しかったに違いない。ひょっとしたら『呪文が使えない』のは王家に混じった(下賤な)ローレシア現地人の血筋のせいだと考えたかもしれない。そうなるとローレシア国内は現地系と入植者系の2つに割れる危機になったに違いない。

 ローレシア父王は早い段階でローレ王子を王太子に指名するという思い切った手に出た。後継者を確定する事で後のお家騒動の禍根を断つためである。彼自身は強いリーダーシップを持った優れた王なのだろう。彼の決定に異議を唱える者はいなかった。しかしローレ王子は王位を継ぐ時に反対派を黙らせるほどの力を身に付けていなければ意味が無い。ローレシア父王は王子には『呪文が使えなくても』立派な王になるための帝王学を叩きこんだ。迷わずハーゴン討伐の旅に出したのもその一環だったのだ。

 ローレシア父王が王子に込めた願いの一つは『魔法=賢さ=高貴さ』という古い価値観を乗り越えた、新しい時代の王者になることである。

 父の愛情、願い、信頼、それらを背負い、『呪文を使えない』欠陥勇者ローレ王子は旅立った!
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この記事へのコメント

togege
2011年08月01日 13:07
サガフロンティア2のギュスターヴもまた魔法が使えない王子として生まれて、でも父王の取った行動が真逆なのが面白いって、言われて初めて気付きました。
cvhiryuu
2014年02月01日 11:26
ドラクエⅡの考察も非常に興味深く、膝を打たせて頂きました。

確かに、魔法というのは時間的、労力的にコストが掛り過ぎて特権階級の独占技術と化したというのはあり得る設定ですね。

ドラクエⅢで僧侶の身体能力が魔法使いより高いのは「需要が多い(怪我や毒の治療は田舎でも必要ですし)から教育のノウハウが洗練されている」→「多少は肉体の鍛錬に時間を回せる」と考えると納得出来ます。

それを考えると、表向きは田舎のジェントリ階級出身、しかも10歳にもならない年でバギやギラで魔物を蹴散らしていたⅤの主人公とビアンカは世間から見たら「数万人に出るか出ないかの神童」ですね。
togege
2014年02月01日 18:42
>cvhiryuuさん
コメントありがとうございます。
ビアンカたちが使う武器や 魔法は少なくともライターや剃刀よりも危険な物ですね。それをを扱うことについては大人たちは何も言わない所を見ると、同じドラクエでもロト3部作とⅤとでは常識の全く違う別世界なのだと思います。
ドラクエⅤの世界の常識、価値観、社会、歴史、考察ネタとしては面白そうではあります。

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