ドラクエⅡ考察~英雄・ローレシア王子の足跡⑤古き時代の終焉

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 ルプガナの船乗りを味方に付けたローレ王子たちは自分たちのルーツであるアレフガルドを訪れた。前作ドラクエⅠを知ってるプレイヤーが100年後の凋落したラダトームを見て感じたのはおそらく“失望”あるいは“寂しさ”といったところだろう。王子たちも同じように、いやもっと強く感じただろう。今回は多くのプレイヤーが共感したラダトームを見た王子たちの気持ちについて掘り下げてみたい。

【勇者の物語の終焉】
 かつて伝説の勇者たちを生みだした地アレフガルドは変わり果てていた。
 国王はハーゴンの脅威に怖れをなして隠れてしまったという。それでもラダトームの国民の生活はさほど混乱無く、国王抜きでも問題は無いようだ。教会が実権を握って、上手く統治しているからだ。
 『参考:アレフガルドで起きた革命』

 それにしても活気が無い。

 かつてのラダトームは王が魔王を倒す勇者を募ることで、そこに集まった英雄を夢見る若き勇者たちと、彼らを支援することをビジネスチャンスと捉えた旅の商人たちがその活気を生み出していた。勇者の物語がアレフガルドの活気を支える源だったと言ってもいい。
 その勇者たちを募集するはずの国王が不在なのだから、勇者の物語が生まれるはずもない。

 ローレ王子がアレフガルドを期待した理想は、ハーゴンという新たな魔王が現れて、それに立ち向かう勇者を募り、そこから数々の勇者の物語が生まれていることであった。当然自分もと思っていたに違いない。ロトの勇者の直系で勇者の物語を聞いて育った上、魔法が使えない欠陥勇者としての劣等感を抱えるローレ王子は勇者の物語への憧れは人一倍強かった。ハーゴンによるムーンブルク落城の報を聞いた時、いち早く旅立った動機のひとつに『自分もアレフガルドの勇者の物語の主役になりたい』があったのは間違いない。
 それからサマル王子もローレ王子ほどではないが、勇者の物語に期待していただろう。サマルトリアの次期王位の座が不安定な身としては“勇者ロトの称号”は欲しいものだったろう。本国での“ひ弱な魔法使い”というイメージの払拭にもなっただろうから。

 ロトの子孫としてアレフガルドの勇者の物語の主役になる夢が叶わないと知った時の王子たちの失望は大きかっただろう。

【王の時代の終焉】
 アレフガルドの勇者の物語の終焉は子供の頃からの夢が破れたというだけで、実際のダメージはさほどでもない。ハーゴンさえ倒せば英雄にはなれからだ。
 王族である王子たちが本当にショックだったのは、ムーンペタ、ルプガナ、ラダトームと続けざまに王を必要としない民を目の当たりにしたことだ。
 ムーンペタやルプガナのような小さな都市ならまだしも、古き伝統の王都ラダトームまでもが王を必要としていないのだ。王子たちは自分たちの存在意義を揺さぶられる衝撃を受けた。

 また、ラダトームの実権を握っている教会に対しても脅威を感じた。
 各地に根を下ろして生活に密接に関わっているのは確実だ。宗教としての“教会の教え”の内容は分からないが、きっと一神教で人間の生き方の規範を具体的に示している可能性は高い。“カミの教え”には王のカリスマ性による統治に取って代わりうる理論が含まれていると推測される。
 教会はローレシアの旅立ち以来一貫してローレ王子たちに協力しているが、もしや利用されているのではという疑念も出てきた。
 
【陸の時代の終焉】
 以前当ブログでドラクエⅡ世界には海社会と陸社会の対立軸があると述べた(参考:ローレシア王子の足跡④第二の旅立ち)陸社会の代表格の一つであるムーンブルクは滅び、アレフガルドも統治システムの変化(王国崩壊もありえる)と海社会への適応を迫られている。そして自分たちがロンダルキアのハーゴンを滅ぼした時には陸社会の大国は無くなってしまう。

【将来を考える】
 それぞれの国の支配者層である王子たちはハーゴンを倒すことだけを考えていれば良いわけではない。ハーゴン打倒後の自国のあり方を考えないわけにいかない。

 新興の弱小国ローレシア・サマルトリアも近い将来、海社会への開国を迫られるはず。その時にどうやって自国の民を守り、繁栄させるか。そのビジョンはまだ無い。後にベラヌール、ぺルポイなどを見て感じた事をハーゴン討伐後の自国統治に生かすはずである。

 全世界に影響力を持つ教会は色々な意味でハーゴン打倒に必要な存在である。しかし教会の思惑を正しく見極めなければ、いいように利用されてしまうし、その強大な力が自分に向けられる。今後、教会との付き合い方は慎重に考えなければならない。

 古き時代の終焉は同時に新たな時代の到来でもある。ローレ王子たちはその新たな時代を切り開くリーダーとして道を示さねばならない。
 ローレ王子にとってのアレフガルドは勇者ロトという古き時代の幻想とは決別し、新たな時代の現実を向き合うきっかけを与えてくれたのだ。

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