FE考察~グルニア王の苦悩・後編

画像【国王ルイの人物像】
 暗黒戦争当時のグルニア国王ルイ。ユベロ・ユミナの父親にあたるこの人物だがゲーム中では『気が弱く、復活したメディウスの力に恐れをなして、ドルーアとの同盟を受け入れてしまった。そのルイ王も、うちつづく敗戦の中で病に倒れ…(紋章1部16章OP)』で片づけられ、他にはロレンス将軍とシーダの会話の中で臆病という証言で語られるのみである。(参考:デザイナーズノート
 ゲーム本編では顔グラフィックすら無い国王ルイだが、グルニア人の行動の背景には彼の影響は大きい。よって当ブログの考察では重要人物として扱わねばなるまい。

【ファイアーエムブレムの虚構を斬る】
 当ブログのコンセプトでは“ファイアーエムブレム”は後世の統一アカネイアのマルス王朝から見た歴史物語というスタンスで見ている。
 英雄王マルスの業績を客観的に述べるなら“竜族の時代を完全に終わらせ、人間の時代に導いた”と“アカネイアから大陸の王の座を奪った”の2点である。英雄王マルスがいかにしてそれを成したかと言えば、ライバルを“全て”武力で倒して覇王となったのだ。
 ファイアーエムブレムという英雄物語の主題はマルス王朝の正当化する為のプロパガンダだという事だ。

 マルスがいかに大陸の王に相応しい人物かをアピールし、敵は『倒されるべき悪』として描くことだ。
 なのでマルスは心優しく人望が厚い。アカネイアのニーナやマケドニアのミネルバ、カダインのウェンデル、グルニアのユベロ、グラのシ―マ、そして神竜族のチキ。彼女たちはマルスの下に集い、最終的にその王権をマルスに禅譲している。つまり各地の前支配者にその統治権を譲られていることが統一王マルスの統治権の正当性の根拠の一つになっている。オレルアン、タリスも同様である。
 では敵の方はどうか。メディウスとガーネフはとても分かり易く絶対的な『悪』として描かれている。
 マケドニア王ミシェイルは過ぎた野心で、グルニア王ルイは小心で、グラ王ジオルは個人の欲望で、アカネイア皇帝ハーディンは嫉妬で国を戦乱に導いた事から『倒されるべき存在』として描かれている。しかし絶対的な悪として描かれてはいない。その背後には絶対的悪であるガーネフやメディウスの暗躍が必ず存在する。人間の持つ弱さにつけ込まれて悪の手先にされてしまったという形で同情の余地が残されている。
 マルスに敵対した国は悪の手先として倒されるが絶対的悪として断罪されてはいない。戦争が終われば皆同じマルス王朝の民だからだ。一般兵や騎士は王命に忠実に従っただけで悪くはない。悪いのは愚かな王であり、根本的な悪はその背後にいるメディウス・ガーネフだ。絶対的な悪のラスボスを倒して民を解放した事、それがマルス王朝の正当性の2つ目になる。そのスタンスは一貫している。
 ファイアーエムブレムが語るのは『民や騎士は王に従うべきという価値観とダメな王は国を滅ぼすという事実、それ故に大陸の民は真の王マルスに従うべきだ。』という主張、これもまたマルス王朝正当化の一環である。
 
 つまり何が言いたいか。ゲーム中で語られるルイ王の人物像はマルス王朝にとって都合良く脚色されているのではないかということだ。実際はどういう人物だったのだろうか。

【ルイ王の実像】
 事実だけでルイ王を語るとこうなる。『ドルーアと同盟を結び、対アカネイア戦争を始めたが、戦争の途中で病死した。』建国以来グルニアを圧迫し続けた大国アカネイアからの独立戦争を決断した勇気ある王という見方も出来る。
 国を滅ぼした臆病者なのか?勇気ある独立の志士なのか?
 
 ゲーム中で語られる『ドルーアに怖れをなして同盟を受け入れた』はおかしい。
 まずドルーアが怖いなら宗主国アカネイアに救援を求めれば良い。年表を見るとドルーアとの同盟はカダイン→マケドニア→グルニアの順なので南北をドルーア陣営に挟まれていて敵に回せば怖いのは事実だろうが、位置関係的にはアリティアからの救援は間に合う。
 それに元々グルニアは大陸で最もマムクートとの関係が良好な国でドルーアを怖れる理由が無い。(グルニア軍の中にマムクートがいること、カシミア大橋という交通の要所に竜族の神殿が存在すること、以上二点がその根拠)
 むしろドルーアの奴隷の子孫でドルーアの眷族である飛竜を使役しているという点で負い目あるいは恨まれる理由のあるマケドニアの方がドルーアを怖れるべきかもしれない。

 グルニアは『ドルーアに怖れをなして同盟を受け入れた』のではなく、積極的に対アカネイア戦争を決断したのだ。“ドルーアに怖れをなして”は後のマルス王朝に都合良く付け足された虚構ということだ。暗黒地竜メディウスからの解放者であることを正当性の根拠とするマルス王朝にとってグルニアは無理矢理ドルーアの手先にされたという形でなくては都合が悪いからだ。

 ルイ王はアカネイアからの独立戦争を決断した勇気ある王だったのだろうか?自身は夢半ばで病死し、戦争にも負けたことで英雄になりそこねた悲運の王なのだろうか?
 そうは思わない。ルイ王は気弱な人物で間違いないと思う。なぜならルイ王は覇気あふれる実力主義のグルニア騎士たちからは認められていないからだ。
 その根拠は紋章2部冒頭のロレンスのクーデター失敗にある。失敗の要因は人望の無いロレンスについて行くグルニア人がいなかった事だが、彼が担ぎあげたルイ王の遺児もグルニア人を動かす原動力にはならなかったのではないか。これはロレンスにとって誤算だったろうが、グルニアの反乱分子を燻り出して狩りたかったハーディンにも誤算だったのではないか。まさかグルニア王家最後の希望を見捨てるとは思わなかっただろう。
 やはりグルニア人が自分たちの上に立つ王として望むのはオードウィンのような実力者だったということだ。それがユベロのようなお子様では話にならないというのが本音だったに違いない。グルニア人の実力主義というメンタリティは王家への忠節よりも上位なのだ。
 ただもしルイ王がアカネイアからの独立戦争のリーダーシップを取った英雄だったなら、グルニア人の多くは志半ばで無念の死を遂げたルイ王の遺児を守ろうとしたのではないか。亡きルイ王の遺意志を継いでアカネイアに再び立ち向かう、その象徴がユベロ王子。そのシナリオが成立しないのはユベロがどうこう言う以前にルイ王が既にグルニア人の支持を失っていたからではないか。
画像 “レフカンディの罠”ハーマイン将軍の台詞『わたしは陛下のご命令で ここに派遣された。ここはおとなしく従っていただきたい。それでもなお あなたが帝国にたてつくというなら妹マリアの命は。ほしょうできないな』ドルーアの威を借りてミネルバに高圧的な態度を取っているが、彼の言う“陛下”とはルイ王ではなくメディウスのことだろう。
 ハーマインはルイ王は自分の上に立つ器ではないと見限ってメディウスを主と仰いでいるのではないだろうか。自分はグルニアの騎士ではなくドルーアの騎士という意識なのではないか。だとするとグルニア王国の崩壊は既にこの時点で手遅れと言えるほど進行していたのではないか。
 
 ルイ王はグルニア騎士たちの支持を失っていた。何故だろう?
 グルニア王の役割はは騎士同士の調停役と宗主国アカネイアとの折衝である。常に大国アカネイアに頭を下げていた為にグルニア騎士からは弱腰と見られていた。自分たちが働いて得た富をアカネイアに吸い上げられるのは当然不満である。当初はアカネイアとの力の差と元々の関係からそれも仕方ないと思っていたが、長年の土地開発などの努力によりグルニアの国力は増大していた。アカネイアとの力の差が埋まるにつれて高まる不満は弱腰外交を続ける王家にも向けられるようになったのではないか。
 そんな状況でメディウスが復活し、ドルーア・マケドニアと手を組んで対アカネイアとの戦争を始めるか否かの決断を迫られた。
 優柔不断なルイ王は決断出来ずに煮え切らない態度だったが、気弱な性格ゆえに反アカネイア感情の強いグルニア騎士たちの突き上げに押し切られる形で開戦に踏み切ったのではないか。

【崩壊、そして滅亡】
 こうして暗黒戦争は始まった。当初は打倒アカネイアという大きな目標とその象徴メディウスのカリスマ性により帝国軍は一つにまとまり足並みの揃わないアカネイア陣営を圧倒した。この時のグルニアは間違いなく大陸最強国家だった。
 しかしパレスを制圧した時そのタガは外れ、グルニア騎士たちの暴走が始まった。
 グルニア騎士たちは広大なアカネイアの領地を勝手に山分けし、各地の領主に収まった。上位権力であるルイ王やメディウスはそれをコントロール出来なかったために後にマルス率いる同盟軍に各個撃破されることになる。
 オレルアンを取り返され、ニーナの名の下に力を盛り返すアカネイア同盟軍、その時点で旗色は悪い。これを跳ね返すには一旦退いてグルニア王国軍として再び集結するべきだった。しかしアカネイアの土地を手に入れたグルニア騎士たちはそれを手放す事が出来ず、奪った土地で果ててしまった。
 グルニア騎士たちは欲に目がくらんだ愚か者なのか?そう言ってしまうのは酷かもしれない。なにせこの時点でグルニア全軍集結を可能に出来る人材は存在しなかったのだから。ルイ王は病気だったし、もしかすると既に死んでいたかもしれない。メディウスは他国の王でありグルニア全軍に号令出来る立場には無い。ハーマインのようなドルーア派の騎士が多かったとしてもグルニア軍の掌握はまだ出来てはいないはずだ。グルニアのカリスマとして期待されていたカミュはニーナを逃がした罪で干されている。もっとも彼にそんな戦略眼は無いだろうが…

 こうしてグルニアは滅びの道を進んで行った。



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この記事へのコメント

togege
2011年12月28日 22:39
【ラーマン寺院の位置が示す事実】グルニアの支配者層は元々ドルーア戦争後にこの地に入植してきたアカネイア人ですが、アカネイア人特有の傲慢さは無く、この地の先住民との間では文化や血の交流が積極的に成されたのだと思います。彼らの意識はアカネイア人でも旧ドルーア人でもなく完全にグルニア人なのでしょう。
veiros
2011年12月28日 23:56
暗黒戦争のカシミア大橋の戦いではグルニアの本拠地がラーマン神殿でしたなあ。神殿内はグルニア軍ではなくガーネフ魔道軍でしたけど、神殿の警護はグルニアの役目っぽいですね。
くそまじめ
2017年03月18日 21:15
グルニア王は、ミシェイル同様アカネイア及びアリティアからの援軍を期待していなかったのでは。

パレス占領後のグルニア軍の動向は悲惨ですね。

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