FE考察~黒騎士カミュ、その行動原理

画像

 今回はグルニア、いやドルーア陣営最強の将軍カミュの行動とその背景について考察する。
 彼の暗黒戦争での行動をざっと並べると…
①暗黒戦争勃発。パレス攻略の戦いで大きな戦果を挙げる
②司令官としてパレスに駐留。ニーナをオレルアンに逃がす。
③メディウスの怒りを買い、本国にて謹慎。
④2年後ニーナ率いる同盟軍がパレス奪還
⑤単身グラに赴き、身分を隠しながらマルスに接触。ボアの魔道書を返還。
⑥グルニアにてニーナの降伏勧告を拒否し、交戦、戦死(?)


【何故ニーナを逃がしたのか?】
 大きく分けると人情説と野望説に分けられる。前者はゲーム中で語られる恋愛感情を含む“情”によるもの。後者はカミュ自身に野心があり、ニーナを切り札として利用しようという意図があったとする説。
 どちらが有力か?と言えば、おそらく前者の“情”の方だろう。というのも、カミュに逃がしたニーナを利用する動きもニーナを奪還する気配も見られなかったからである。しかしカミュには野心やニーナを利用する意図はあったけれど、上手く使えなかっただけという可能性もある。カミュ自身の野心の有無はについてはひとまず置いておこう。

 カミュに野心の野心の有無どちらであれ、ニーナを逃がしたカミュに確実にあったと思われる感情はある。それは『罪悪感』だ。
 カミュは対アカネイア戦争で最大の戦功を挙げた、つまり最も多くのアカネイア人を殺したということだ。(間接的にを含む)数多くのアカネイア人を殺したせめてもの罪滅ぼしとしてニーナを逃がしたのは理由の一つではないだろうか。
 カミュは元々育ちが良いゆえかアカネイアへの憎しみは強くはなかったと考えられる。グルニア上流階級の出の者が教養として学ぶ事の多くは、宗主国であり大陸一の先進国アカネイアにある。グルニア貴族の中でも裕福なカミュはアカネイアから奪われる苦しみをさほど感じてはいなかった。そしてアカネイアの文化に触れる機会は多かった。グルニアの中でも親アカネイア派であり、先進国アカネイアへの憧れがあった。カミュの価値観はアカネイア寄りだったのではないか。アカネイアの価値観とはパレス王家を頂点とする血統ピラミッドである。(参考:アカネイアの秩序)それに沿うならば彼が忠誠を誓うグルニア王家の上にはアカネイアが存在する。
 つまりカミュには、自分たちのやったことは聖王国アカネイアへの反逆であるという罪悪感があった。やはりドルーアのメディウスは“悪の帝王”であり、グルニアとそこに属する自分は“悪の手先”に過ぎないということだ。

 グルニアやマケドニアの人間がいずれそんな罪悪感から、士気を低下させ離反するリスクは、当初からドルーアもガーネフも想定していた。だからこそ、そうなる前に短期決戦でパレス王家の根絶やしを狙ったのだ。だが、よりによってカミュが最も早くその“罪悪感”に目覚めてしまったのは最悪の誤算だった。

 ⑤のグラでのイベントは深い。
 『君がマルス王子か… ならば一つ頼みたいことがある。この魔道書はアカネイアのボア様のもの。ドルーアのボーゼンが隠し持っていたが、わけあって私が手に入れた。君からボア様に返してくれぬか。それと…、ニーナ姫をよろしく。君の手で守ってあげてほしい。』
 この台詞からも彼の価値観がアカネイアの血統ピラミッドに準じていることが分かる。
 それ以上に感じられるのはニーナへの未練だろう。もちろんニーナに会えるわけない事など百も承知だ。しかし当然、事の経緯の報告はニーナにされるであろう。名を明かさずともマルスの報告からニーナは自分の存在を感じるに違いない。巧妙な恋愛テクニックではあるが、この時点でカミュがニーナと再会出来る可能性はゼロだ。にも関わらず危険を覚悟で近付いたのは、会いに行かずにはいられなかったという事だろう。恋する男の衝動的行動以外の何物でもない。
 そもそもニーナを逃がしたのも衝動的な行動だ。その行為が戦争の長期化、同盟の瓦解、そして祖国の滅亡につながるなどとは考えなかった。ニーナ一人を逃がしたところで戦争の勝利は動かないと甘く見ていたに違いない。
 
 カミュに野心やニーナを利用する意図があったかどうか、その結論は明らかだろう。

【騎士としての忠節】
 カミュの行動原理としてもう一つ、騎士としての主君への忠節がある。
 最終的にカミュは滅びゆく祖国に殉じることを選んだ。
 彼にとっての忠節の対象は基本的にはグルニアの国王だろう。それゆえにドルーアと組んでアカネイアを滅ぼすと決断した国王に従った。そして誰よりも多く、アカネイア人を殺した。この時点ではあまり深く考えなかった、あるいは深く考えまいとした。
 だがカミュは途中で宗主国アカネイアもまた自身の忠節の対象だと気付いてしまった。元々グルニアの王はアカネイアの騎士だった。アカネイアは王でありグルニアはその騎士なのだ。祖国グルニアへの忠節を尽くせば、宗主国アカネイアへの反逆になるという矛盾に誰よりも苦しんだ。
 カミュは悩んだ結果、せめてもの罪滅ぼしとしてニーナを逃がすことにした。愛する女性には生きて幸せになって欲しい思ったのもあるだろう。

 だがその行為はカミュをさらなる苦悩に追い込んだ。それは祖国グルニアを滅ぼす行為だと、“後になって”分かったからだ。いっそドルーア帝国への反逆の罪で処刑された方が楽だったのかもしれない。カそれでもミュは生かされた。祖国グルニアがカミュを必要としたからだ。

 宗主国アカネイアに反逆し、多くの兵士や王族を殺した罪。ニーナを逃がすという裏切り行為により祖国グルニアを滅亡に追い込んだ罪。逃れられぬ大罪を背負ったカミュには騎士として戦って祖国グルニアと共に滅びる道しか残されてはいなかった。最後に愛した女ニーナの幸せを祈りながら…
  

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 7

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス ナイス
かわいい

この記事へのコメント

lime
2013年03月19日 15:02
暗黒戦争が集結した後のカミュの生涯は波瀾万丈でした。

記憶を失いながらもバレンシア大陸に漂着し、後の恋人となるティータの介抱され、リゲル帝国のルドルフ皇帝の世話を受けた。
バレンシア大陸でも戦う中で記憶を取り戻し、戦乱の集結に一役買った後は、アカネイア大陸に戻って英雄戦争におけるマルスの戦力となった。

英雄戦争でのシリウスの行動を大まかに辿ると、
ホルム海岸にてグルニア王家の遺児達の亡命を補助。
遺児達がマルスの保護下になると同時に、自身もマルス軍に加入。

マルス軍の一員として英雄戦争を戦い抜き、パレスにてハーディン王の最期、アリティアの勝利を見届ける。

メディウスの生け贄に拉致・洗脳されたニーナを救助。

英雄戦争終結後、姿を消す。

こんな所か。
lime
2013年03月19日 15:03
『アカネイア王国を盟主とするグルニア王国』の『騎士』から、立場的制約を持たない一人の人間となったカミュが、グルニア王家の遺児を保護した経緯からは、
カミュの中での忠節の優先順位は、やはりグルニア>アカネイアだった事がわかる。
元々器用な政治センスを持たぬカミュの行動だから尚更だ。

勿論、ホルム海岸では『アカネイアとは無関係(懸賞金やらをかけてた可能性はありそうだが…)』なホルム・バイキングから遺児を護る為に戦ったが、アカネイアのグルニア遺児捜索に対しては見て見ぬ振りをしていた可能性も無くは無いだろう。
しかし、マルス軍の一員としてアカネイア軍を相手に戦った英雄戦争での経緯からは、やはりカミュの中では宗主国アカネイアよりもグルニアが優先順位として上だったと結論付けて良いだろう。

そしてアリティア対アカネイアの戦いがアリティアの勝利と言う形で幕を閉じた後は、自分を愛してくれたニーナを救い出し、グルニアのパレス制圧以来の自分に対し最後のけじめをつけた。

終戦後は自分の帰りを待つ、バレンシアのティータの元へ向かったのだろうか。

アカネイア大陸の歴史の表舞台での『悲劇の英雄』としての役目を終えたカミュは、歴史の裏方としてピンポイントで重要な役割を果たしつつも、慎ましく平穏な幸せを手にした。
lime
2013年03月19日 15:45
話が飛ぶが、『史実』におけるカミュは暗黒戦争で確かに『死亡』し、『ファイアーエムブレム』に登場したカミュと瓜二つの謎の男・シリウスは『ファイアーエムブレム』における創作人物だった可能性はある。
(そうなると『史実』におけるニーナはメディウスの生け贄となって死亡、或いは英雄戦争でのどさくさに紛れてマルスから秘密裏に暗殺された可能性すら浮かんでくる。)

その場合は『ファイアーエムブレム外伝』とは、時系列上で暗黒戦争と英雄戦争の間の時期に勃発したバレンシア動乱に、『ファイアーエムブレム』での登場人物を何人か捻り込んだ、史実を元にする創作歴史物語になるのか…?

何にせよ、カミュという男は『史実』と『ファイアーエムブレム』の双方で絶大な存在感を放つ人物だった訳だ。
togege
2013年03月19日 18:27
>limeさん
考察コメントありがとうございます。
カミュ(=シリウス)はグルニアの為にアカネイアを滅ぼしたのに、罪悪感を感じてニーナを逃がして、そしたらグルニアが滅びたのでグルニア再興の為に動いて…と、行動がブレまくりの人物ですね。人間らしいというか。
一度強い意志で決断して宣言した事でも、いざ実行の時にはやっぱり止めよう… となる、ブレる人間らしさに親しみが持てる人物と言えます。
シリウスの正体については後に詳しく取り上げますが、とりあえずここではファイアーエムブレムでのカミュは民衆が求める英雄像を投影した存在なのではと考えます。カミュのようなブレる凡人的な英雄が好かれるのなら、嫌われるのは逆にブレない英雄なのではと思います。
ロギー
2014年02月06日 21:53
正直言ってカミュもミシェール、ミネルバ兄妹と同じくらい嫌いですね。
政治センスが無い以前に馬鹿ですよ。
臣下は主家と自家の繁栄をさせれば良いのです。
カミュは黒騎士ではなく馬鹿騎士で十分です。
こいつとミネルバはミシェールのように死んでほしかったですね。
あと、グルニア王家のユミナとユベロは後にマルスによって毒殺されたと思います。
王家継承の資格はありませんが、消された気がします。
togege
2014年02月06日 23:23
>ロギーさん
カミュはきっと善良な人物なのでしょう。ニーナを逃がしたのは多分善意からでしょう。(下心もある?)
影響力の大きな政治家としては善意だけで動くのはルーピーですがね…
戦記物語「ファイアーエムブレム」でこういう人物(ミシェイル、ミネルバ含む)が何故持ち上げられるのかの分析については、別の機会に取り上げたいと思います。
lime
2014年02月07日 15:53
ロギー様の意見の視点を変えれば、ユミナが中途半端な支配階級にならずにシスターとしての人生を選んだ点は賢明な判断だったと言えますな。
どことなく無責任な印象が残ったレナの修道院での余生を選んだミネルバの行動も、自分の命を守るためという意味合いがあったのかも知れない。

『ユベロがマルスの元で留学』というのはどういう意図なのかは気になりますな。
国としてのグルニアは滅亡し、王家への支持もほぼ無いにせよ、ユベロが成長して力をつければ旧グルニアに何かしらの影響を与える存在になる可能性は高い。

幼い内に新生アリティアの価値観を刷り込む事や、人質として自分の目の届く範囲に置いておく(グルニアから引き離す)事が狙いだったのかも。
ロギー
2014年02月15日 20:57
lineさんの話はありえますね。
おそらくユベロはマルス王子の犬として生きると思います。
おそらくグルニア王国に帰らず新生アリティアの忠実な臣下として改造されると思います。
もし、そうならなかったら、姉共々毒殺と思います。
どうせ、あの姉弟は祖国では恥さらしですから殺しても問題はないです
遠藤
2014年10月09日 13:44
カミュがやった事
・アカネイア軍を蹴散らし大きな武勲を挙げた
・ニーナを逃がした
・陰ながら連合軍を支援した
・最終局面で降伏勧告が連合軍から行われるも受け入れず騎士団もろとも壮絶に討死した。

滅茶苦茶ですね。やはり政治家として評価するのは難しい。
傍目から見てカミュの行動に合理性を感じる事が出来ない。

結局、グルニアは最終的にマルスの傀儡であるユベロによって辛うじて存続する事になった様ですが仮にカミュがグルニアの騎士団を消耗させずに1部を終わらせる事が出来たら全く違う展開になっていたかもしれない。



------妄想

しかしもしかするとカミュが降伏勧告を受け入れなかったというのは嘘で、ニーナのカミュに対する降伏勧告の提案をマルスが拒絶したのかもしれない。
マルスの立場に立って見ればカミュはマルスの覇道の邪魔者でしかない。仮にカミュが降伏し騎士団事連合軍に合流した場合マルスの立場はそれなりに危うくなるだろう。ニーナはカミュを重用するだろうし個人的武勇だけでも最強クラス、それに加えて黒騎士団がついてくる。

カミュが連合軍に合流し最後まで生き残った場合強烈な存在感を放つだろうしはっきり言ってグルニア人とニーナ以外にとって害はあっても益は少ない人物だったろう。
ハーディンやアカネイア貴族の武将を抱えるマルスとしては対ドルーア戦の趨勢が決した状況でこれ以上戦後のライバルを増やしたくなかっただろう。現にマルスはメディウスに完勝している。
ロレンスはタリス繋がりで味方に引き込めると思ったのではないか。

マルスにはニーナの提案を拒絶するだけの大義が有る、父親を殺された事。そもそもが大罪人である事。
ニーナも皆の手前我儘を押し通せなかったのではないだろうか。

と妄想してみました。
togege
2014年10月10日 00:19
>遠藤さん
コメントありがとうございます。
カミュを読み解くキーワードは「不合理」だと考えます。
優秀な将軍であるカミュは戦場では合理的思考を元に行動しているはずです。その合理的な人物が、不合理な行動に出るのは、合理性よりも強く人を動かす不合理な感情や衝動があると考えるのが「合理的」です。
不合理に動くからこそ、そこにはカミュの行動原理があるのです。そしてそれは、その非合理な行動を疑いなく受け入れるファイアーエムブレムの世界に生きる人々の行動原理でもあります。
例えば価値観、信仰といったものなど。
遠藤
2014年10月11日 15:09
>>togegeさん
返信有難うございます。
カミュの動きは不合理故に人間ぽさを感じますね。
自分なりに考察してきましたがカミュは分かりません。
他の記事も読んでいますが皆さんの考察に「こんな解釈があったのか」と感心するばかりです。

この記事へのトラックバック