FE考察~英雄アンリの影・前編

画像
【意外に語られていないアンリの実像】
 今回は英雄アンリが建国したアリティア王国についての考察。アリティアは主人公マルスの祖国だが、その割りにアンリがアリティアを建国した経緯はファイアーエムブレム本編では意外に語られていない。何度でも言うが“ファイアーエムブレム”は後のマルス王朝の正当性を主張するためのプロパガンダという側面がある。それゆえに“統一王”マルスにとって都合の悪いことは書かれない。当然ご先祖様であるアンリについても悪い事は書けない。しかし書かなかったり嘘を書く事で隠された真実というものは多々ある。その辺りの行間を読んでみたい。

 紋章の謎14章で語られている通り、マルスは正確にはアンリの子孫ではない。愛し合っていたアルテミスと結ばれなかったアンリは生涯独身を貫き、アリティアはアンリの弟マルセレスに引き継がれたからだ。

 いくつかの疑問が生まれる。

【なぜアンリとアルテミスは結ばれなかったのか?】
 一言で言えば“身分の差”これに尽きる。
 アカネイア大陸の人間社会の身分ピラミッドの頂点であるアカネイア王家、しかもただ一人の生き残りであるアルテミスには聖王国再建と王族の血統を残すという使命があった。アルテミスの結婚相手は“つなぎ”とはいえ、アカネイア王として迎えることになるので、それなりの身分の者でなくてはならない。アンリでは地竜王メディウスを倒した英雄とはいえ辺境の地アリティアの開拓民、アカネイアから見れば平民、下手すれば蛮族あるいは奴隷に等しい身分なのでアルテミスの相手として相応しくない。結局アルテミスの結婚相手すなわち次期アカネイア王として迎えられた人物は解放軍のリーダーでアカネイア最有力貴族のカルタスだった。(参考:アカネイアの秩序)

【アンリとアルテミスの恋仲は本当にあったのか?】
 そもそも身分の差のあるアンリとアルテミスの恋物語はあったのか?後世の創作という可能性もある。
 アンリがアルテミスを愛していたというのは本当のようだ。彼は生涯妻を迎えないことでアルテミスへの愛を貫いた。
 ではアルテミスの方はどうだったのか?アルテミスの子孫であるニーナがアンリとの恋仲を肯定している。つまり両想いだったと伝えられている。

 しかしアカネイアの貴族階級にとって身分の低いアンリはサルのようなものだ。それがアルテミス様にちょっかいを出すなんて怖れ多いことだ。
 しかし意外なことにアンリとアルテミスの恋物語はアカネイアの人々に好意的に語り継がれている。アルテミスの子孫であるニーナも自身の悲恋にアルテミスの悲恋を重ねている。アカネイア王家はアルテミスとアンリのロマンスを否定してはいないということだ。

 下世話な話だが、アルテミスとアンリの仲はどこまで進んだのだろうか?
 結論から言えば二人の仲はプラトニックで手も触れてないのではないか。なぜなら最も高貴な身分のアルテミスと下賤な身分のアンリとが体を触れあう仲になるなどありえないからだ。アンリが後世のアカネイア人に好意的に受け入れられているのは、アンリが分をわきまえているからだ。

 ハッキリ言ってしまえば恋愛と結婚は別だと割り切っているということだ。
 おそらくアルテミスとアンリの接点はほんの僅かなもので、二人が一線を越えた可能性はほぼ無いと考えられる。だからこそ二人の恋物語はアカネイア人に好意的に受け入れられたのだ

【アンリの人物像を考察】
 低い身分でありながら、アカネイア人に好意的に受け入れられたアンリの人物像はおおよそ以下のようになる。
 恐ろしき竜からアカネイアの人々を守った最強の戦士であり、容貌も整っていたため、当時のアカネイアの女性たちからはアイドルのようにモテていたに違いない。
 高貴な身分の者たちからの受けも良かった事から、礼儀正しく教養も高かったと考えられる。
 高い教養と礼儀作法を身に付けていた事から、アンリの出自はアリティアの開拓民の中でも最も有力な指導者層の子息だったと考えられる。
 
【アルテミスとアンリの恋物語概要】
 竜族により滅ぼされたアカネイア王国。落ち延びたアルテミスを保護したのがアリティアのアンリだった。身分の差もあり、またアルテミスの侍従もいただろうから二人っきりになる機会はほとんど無かったと思われる。親族を皆殺しにされ絶望に打ちひしがれた当時のアルテミスにとって、戦士としてもリーダーとしても傑出したアンリを信頼していたのだろう。後に語られる“プラトニックラブ”が生まれたのはこの時期に違いない。二人が相思相愛だったとしても見つめ合ってドキッ、という程度だろう。
 程なくしてアルテミスは、アカネイアのカルタスやオードウィンらが組織する解放軍に迎えられた。アルテミスは人間の団結の象徴として、人々が集うべき光となった。(参考:アカネイア視点のドルーア戦争・前編) この時アンリは解放軍に参加しなかった。いやカルタスらに遠ざけられたのかもしれない。アンリの秀で過ぎた実力は解放軍の秩序を乱し、カルタスの構想を狂わせると見たのかもしれない。アンリは低い身分でありながらアルテミスに接近し過ぎて、信頼され過ぎたのだ。アルテミスがアリティアに身を寄せた短い時間はカルタスらアカネイア貴族に警戒心を抱かせるのに十分長い時間だった。
 とにかくアルテミスと遠ざけられたアンリは、それでもアルテミスの力になるために単身北の氷竜神殿に赴き、竜殺しの剣ファルシオンを手に入れた。そして地竜王メディウスを討伐した。人々の記憶に残る彼の活躍は主にこの時期である。
 ドルーア戦争で決定的な働きをしたアンリではあったが、アルテミスとの間には高い身分の壁が立ちはだかっていた。以前のように近付くことも、直接会うことすら許されなかったのではないか。アンリは戦いに勝ち、恋に破れた。

【アルテミスのさだめ】
 ニーナの語るアルテミスのさだめとは、
 『ファイアーエムブレムによって王家が回復できた時、その代償としてもっとも愛する者を失うという』
 ニーナの場合はカミュで、アルテミスの場合はアンリになる。
 だが、この掟(?)はいかにも後世のこじつけ臭い。ニーナは悲劇の主人公としての自分に酔っているように見える。そもそも高貴な家柄の娘は政略結婚の道具として生まれたようなもので、恋愛の自由など無い。王家の為に愛する男と別れるなど、ごく当り前のことだ。
 だからこそ高貴な生まれの女性は自由な恋愛に対する憧れが強いのだろう。例えばアンリとアルテミスのような。
 高貴な生まれの女性は何不自由なく育ち、家に決められた相手の家に嫁ぐ。不満は無いが自由も無い、そんな人生だ。
 そんな彼女たちが憧れるのが英雄アンリと王女アルテミスの恋物語。しかしその物語の中でアルテミスは自由な恋愛よりも家の為の結婚を選んでいる。そう、アルテミスの物語はアカネイア女性の模範を示しているのだ。

 なのでアルテミスが本当にアンリを愛していたかどうかは分からない。というよりも後世のアカネイア人にとってアンリとの恋の真相はどうでもいい。アルテミスはドルーア戦争時はアカネイアの人々の集う光であり団結の象徴だったが、戦後はアカネイア女性の模範を示すべき偶像として祭り上げられたのだ。

 アルテミスにしろ、ニーナにしろ、アンリとカルタス、マルスとハーディン、アカネイアの物語の表舞台に立つ者は観衆が望む役を演じることを強いられた。アルテミスとカルタスは望まれた役を演じきったと言っても良い。アンリは上々の演じっぷりだったので伝説に名を残す事を許された。望まれた役を演じる事に抵抗したハーディンの末路は憐れだった。マルスとニーナはどうだっただろうか…

 後編はアリティア建国についての考察

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 5

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い

この記事へのコメント

ロギー
2012年07月09日 23:52
FE考察は面白いので新しいのを楽しみにしてます。
“ファイアーエムブレム”はマルス王朝の正当性を主張するためのプロパガンダの側面。
ありえますね。でも、それをやってのけるのって、マルスはお人よしの王子様ではなく中々のやり手だったんでしょうね。

因みにコーエー数値化スレというサイトにマルスの能力値が書かれてます。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9685/1226207384/28
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9685/1226207384/29
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9685/1226207384/30
魅力以外は評価しにくいと言われてますが、強固な王朝を作ったんですから無能じゃないと思います。

しかし、アカネイアは百年前の大戦で滅びかけたのに全然反省してないなんて愚かですね~
まあ、ここら辺は中央政権故の傲慢さなんでしょうね。
togege
2012年07月16日 21:38
>ロギーさん
コメントありがとうございます。
マルスの評価を数値化するのは面白そうですね。いずれ英雄たちの通信簿的なものは書いてみたいと思いました。
リンク先とはまた違った基準で考えています。

アカネイアは確かに二度も同じ相手に滅ぼされていて学習しないように見えますね。ですが一度目は人間と竜族の決戦で、二度目はアカネイアの支配に対する反乱と、実はその意味合いは大きく異なります。同じくパターンでやられているように「見せる」のも後のマルス王朝のプロパガンダの一つではないかと考えています。
lime
2012年07月30日 14:17
初めまして。FE考察を楽しく読ませて頂いてる者です。


アカネイア大陸では、アカネイア王家の『アルテミスの悲しい定め』と双璧を成すもう一つの恋物語が生まれ、後世に語り継がれております。


それこそがファイアーエムブレムの主人公とヒロイン格のマルスとシーダの物語です。

後のアカネイア大陸の覇者・マルスがグラ王国の裏切りにより14歳でアリティアを追われ、逃げ延びた辺境の地タリス王国でシーダと出会い、後にタリス王国を拠点に16歳で挙兵。

それ以降、シーダ王女は暗黒戦争・英雄戦争で影となり日向となりマルスを支え、最後は結ばれるハッピーエンドの物語。

アカネイア王国の『アルテミスの悲しい定め』のアンチテーゼのようにも思えます。


その裏付けとして、紋章の謎のエンディングの後日談では、シーダの後日談は他のキャラ達に比べて、あからさまに美化されております。
(他のキャラと同等の後日談なら、簡潔に『マルスと結ばれた』だけで済む。)



また、アカネイア王国の統治権をマルスに譲渡した後のニーナのその後の詳細が不明なのも気になります。
(他の旧王国の支配階級の人間達は、『レナの修道院で働く(マケドニア姉妹)』、『パレスで暮らす(シーマ)』、『魔道学院でシスター修行(ユミナ)』、『アリティア留学(ユベロ)』などと一応の消息は語られている)


こういった細やかな要素も、アカネイア大陸の覇権を最終的に勝ち取ったマルスを引き立てている様に思えます。
togege
2012年08月13日 21:55
togege
2012年08月13日 21:59
<ロギーさん
英雄たちの評価を数値化するのは面白いと思います。FE考察がある程度進んだら、是非書いてみたいですね。
マルスは評価しにくいというよりも、評価の基準の定義自体が分かりづらいと思ったので、FE世界の英雄を評価する基準から考える必要がありますね。
lime
2012年08月29日 05:26
返信頂き有り難うございました。

私はtogege様に返信を急かすような事はしないつもりですので、今後ともご自身のペースで考察を続けて下さいませ。
lime
2012年08月29日 05:28
こちらは私信ですが、一部の考察ページにコメントしようとしたら、スパム判定を受けてしまいました。
lime
2012年08月29日 06:07
更に私信で申し訳有りません。
文章を訂正したらコメントできました。

(「ドルーア帝国について」の記事です)


本当にお騒がせ致しました。
ハッシー
2017年12月18日 22:13
 中学生の頃に、SFC(スーパーファミコン)版『聖戦の系譜』を持っていただけに、何だか考えさせられました。

この記事へのトラックバック

  • レイバン 店舗

    Excerpt: FE考察~英雄アンリの影・前編 考えるを楽しむ/ウェブリブログ Weblog: レイバン 店舗 racked: 2013-07-06 04:00