FE考察~英雄アンリの影・後編

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【アリティア王国誕生の謎】
 正史によると、アンリがメディウスを倒したのが498年、アリティア王国建国が500年となっている。
 今回は何故この時アリティア王国は建国したのか?という謎を考察する。
 見方を変えると、なぜこれ以前にアリティア王国は生まれなかったのか?という謎でもある。前回(英雄アンリの影・前編)にて、アンリは辺境の開拓民でありながらアカネイアの上流階級の者たちに気に入られるのに十分なほど洗練された物腰や礼儀作法を身に付けていたことから、アリティアの有力者の出身だと述べたが、もう少し言えばアリティアはアンリ登場の時点でかなり高い文化レベルとそれを生み出す生活の余裕(=食料生産力)を持っていたと考えられる。
 つまり何故アリティアにはアンリのメディウス討伐以前に王国が生まれなかったのか?という謎が出てくるわけだ。

 アリティアに王国が誕生する条件がいくつかあって、500年以前にはそれを満たしておらず、500年になってようやくアリティア王国誕生の条件が揃ったということだ。開拓地アリティアは多くの人が集まり、高い食料生産性を実現し、生活に余裕が生まれたことで文化レベルも高まった。しかしそれだけでは“アリティア王国”誕生の条件は満たしていなかったのだ。

【アリティア王国誕生の条件とは】
 アリティア王国誕生の条件とは500年以前には無く、500年以後にはあったものがそれに当たる。
 結論から言おう。
 大きく言えば二つ。一つ目は宗主国アカネイアの承認。もう一つはアリティア地方の統一である。

【宗主国アカネイアの承認】
 解放戦争終結後、アカネイアを宗主とした中央集権的な七王国体制が成立し大陸は百年近く安定した。
 “正史”では解放戦争で活躍した英雄がその功績を認められて、各地方を与えられて王になったとされている。
 属国の王は当然アカネイアを主と仰ぎ、その即位には宗主アカネイアの承認が必要だったに違いない。宗主アカネイアへの反逆はもちろん承認なしに王を名乗れば、強大なアカネイアの権力に叩きつぶされてしまうだろう。逆にアカネイアの承認を取りつけた王なら、アカネイアの権威をバックに支配力を高められるメリットがある。

 アカネイアのカルタス王の弟が建国したオレルアンやカルタス王の元部下のオードウィン将軍が興したグルニア、アカネイアの援助で生まれたマケドニアは完全にアカネイアの承認を受けた王が治める属国である。ではアリティアはどうなのか?高い生産性と文化レベルがあるなら、アカネイアの援助や承認無しでも王国を名乗れないのか?

【アリティア地方の統一】
 アリティアはマルスの時代は絶対的な君主制が確立しているイメージがあるが、本当にそうか?
 例えばグラ、アンリの死後すぐに離反し分離独立している。以後アンチ・アリティアをアイデンティティとしているように見える。
 それからアランとサムソンの村、昔から仲が悪いらしいがマルス“王子”が片方を訪れるともう片方は門を閉ざしてしまう。アリティア王城の近くの村の態度としていかがなものか。“王子”の命令よりも村の都合の方が重いらしい。アリティア王家の支配力は決して絶対的ではない。

 アリティアとは元々開拓村の集合体だった。そして開拓村同士の土地の所有権を巡る諍いが絶えなかった。例えばアランとサムソンの村のように。開拓村は大きい村もあれば小さい村もある。それらの開拓村を統一したいという夢あるいは野心を抱く者もいただろう。それに村同士が足の引っ張り合いをしていては、外からの侵略者(例えばアカネイア)に漁夫の利を取られてしまうという危惧もあった。そういう考えでアリティア統一に乗り出したのが『アンリの村』だったと考えられる。
 『アンリの村』はアリティアを統一する程の力は無かった。一つの村が突出して力を持つと、それに危機感を持った他の村が団結してその村を潰しにかかるという力学が働くからだ。

 そこで『アンリの村』は大国アカネイアの権威と力を借りることにした。幸いアンリはアカネイアのアルテミス王女(王妃)に大きな貸しがある。『宗主アカネイアの名の下にアンリをアリティアの正統な統治者と認める』そんな大義名分を盾に他の村を支配下に置けるし、反対派を潰す為にアカネイアの援助も得られる。
 アカネイアとしてもアリティア開拓地と英雄アンリを聖王国の秩序に組み込めるというメリットがある。こうして開拓村アリティアと英雄アンリは名実ともに聖王国アカネイアの支配下に入ったのだ。
 
【アリティア王国の秩序】
 新王国アリティアは宗主国アカネイアの承認と英雄アンリのカリスマ性を武器に開拓村の上に立った。
 不満を抱く村も少なくなかっただろう。しかしアリティア王国はその力で開拓村の富を奪って独占しようとはしなかった。アリティア王国はその力を使って自らを開拓村の調停者と位置付けた。例えば村同士の土地権利争いに裁断を下すといったような役割を担う上位組織だったと考えられる。日本史で言えば鎌倉幕府のようなものだろうか。
 アリティア王国の政治は概ね開拓村に好意的に受け入れられた。その裁きがある程度納得のいくような形だったのもあるし、村にとっても自らが開拓した土地の所有権の正当性を認められたことで、アリティア王国を信頼するようになったのだろう。
 アリティアの1年後に建国されたグルニア王国も同様の統治システムを採用して力をつけていった。

【英雄アンリの晩年】
 史実としては、アンリはアリティア王国建国から37年後に没することになる。彼自身は子がいなかったため、弟のマルセレスが後を継いだとされている。またアンリの死後すぐにグラ王国がアリティアから分離独立した。

 疑問なのはアンリがアリティア王国繁栄の基礎を築いた政治家だったのだろうかということ。
 アンリはアルテミスを守るために戦い、遥か北方の氷竜神殿にまで行って神剣を得て、再び前線に出てメディウスを倒し、生涯妻を娶らなかった。そう、彼の行動は“全て惚れた女のため”で一貫している。アリティア建国はアルテミスのためという行動原理からは外れているということだ。

 ひとつの説として英雄アンリはアリティア統一のための“みこし”でしかなく、実権は他の者が握っていたのではないか、というのがある。例えば弟マルセレスとか。

 ただアリティアの開拓村で生まれ育ったアンリには元々故郷をより住みよい土地にしようという夢はあっただろうし、アルテミスの勇者としての役割を終えた後は本来の夢である『アリティアを住みよい土地へ』という夢に切り替えたのかもしれない。先の大戦で発揮したリーダーシップや竜殺しの英雄としてのカリスマ性を生かして、アリティア王国建国に力を注いだのかもしれない。
 自分のカリスマ性を継いだ子を残さないのは、アリティア王国にとってはマイナスだった。それでもなお貫きたかったアンリの王である前に一人の男としての想いだったのかもしれない。

【グラの離反】
 一方、アンリの名声と善政によるアリティアの繁栄を喜ばない者もいた。宗主国アカネイアのカルタス王だ。アカネイアは先の大戦からの復興も進み、かつて以上の力を取り戻しつつあるとはいえ、アリティアの急成長は脅威であった。特にアンリの高まり過ぎた名声は危険だと感じた。アリティアはアカネイアにとって仮想敵国でもあった。
 とはいえ、アリティアは『聖王国の盾であれ』を国是とするほどの絶対恭順を誓っている。アンリはアカネイア宮廷での人気も高く手を出しづらい。もしかしたら、言いがかりをつけて兵を出そうとしたが止められたなんてこともあったかもしれない。だがカルタス王は何としてもアリティアの力を削いでおきたかった。
 
 アリティア国内にもアンリ王らの支配を不満に思う者もいた。カルタス王はそこに目をつけた。反王党派の一人を焚きつけて内紛を煽ったのだ。
 アンリ王の後継ぎはアンリ同様にアカネイアの承認を必要とするが、王太弟マルセレスの他にもう一人(グラ初代王)に承認を与えたのだ。それを止めようとすればアカネイアへの反逆になる。アリティアはグラの離反を黙って見逃すしかなかった。
 グラはアンチ・アリティアとして生まれ滅びることになる。

【アリティアの正統性】
 アリティア統治者の資格をまとめると以下のようになる。
①開拓民の利益の保護者である。
②宗主国アカネイアの承認を得ている。
③地竜王討伐の英雄である。

 ①は王としての当然の義務である。調停者としての働きはここに含まれる。
 ②は元々他の開拓村の代表たちと同格であったアリティア王家が開拓村の上位に立つにはアカネイアの権威を借りる必要があった。当然宗主国アカネイアに対しては臣下としての義務を果たさねばならなかった。
 ③は外圧に頼るだけでなく、自ら力を示す必要もあったということだろう。ドルーアの脅威から土地と民を守ったという功績は王に相応しいといえるだろう。後を継いだ王たちは当然地竜王討伐の英雄ではないが、同様の危機があれば自ら先頭に立ち、英雄王の器を示さねばならない。
 これらのアリティア王族の正統性を証明して見せる為に、コーネリアスとマルスは自ら神剣ファルシオンを手に戦いに赴いたのだ。
 

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この記事へのコメント

ロギー
2012年07月18日 21:24
アンリが生涯独身を貫いたのは『王である前に一人の男としての想い』は大いにありますね。
でも、彼が子を残さなかったのはその想いと弟のマルセレスの為だと思います。
理由はマルセレスがアンリの後を継げたのはアンリの№2として辣腕を振るってたからだと思います。
現にアリティアは鎌倉幕府のような農協組合だと考えれば血筋よりも技量が優先ですし、聖王国の対応を考えればが分離工作を最小限に抑えるためだったんだと思います。
ただ、あの分離の実行者はカルタスではなく彼の息子の可能性もありますね。カルタスはアンリよりも一回り以上は年上ですし、故人の可能性があります。

因みにアルテミスもアンリのことを愛してたと思います。
理由はアンリはカルタスとの間に子をもうけてすぐに早逝してます。
これはアルテミスが丈夫でない以外にも王家の秩序維持のためにカルタスとの結婚を強いられアンリを裏切った事への罪悪感が大きかったと思います。

次の考察も楽しみにしてます。
フルート
2013年03月23日 21:52
 私はアンリとアルテミスのお話の創作をした者です。
アンリには優秀な軍師ポジションの参謀がいて戦争の補給・進軍をまかせていたので戦後の政治は安定していたのだと思います。
 戦後はグラの独立もありますが、戦後の復興の過程で別勢力が台頭していくこともあり、その鎮圧のためにアカネイアが命令してアリティア軍に討伐命令を下したのだと思います。アカネイアはアリティア軍を削れてアカネイア軍を温存しておくことができます。
 アンリはお人よしの性格もあり、戦後アカネイアの不満のあるグルニア・マケドニア・オルレアンをまとめ上げた連合軍でアカネイアをつぶそうとした野心がなかったのだと思います。

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