FE考察~聖王国を蘇らせた男・後編

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 前回の続き
 カルタス王とカルタス家の謎
 (参考:FEデザイナーズノート#1) 

【なぜカルタス家は王家を乗っ取らなかったのか?】
 大きな疑問がある。
 解放戦争勝利後、カルタス家はアルテミス王女と結婚し、カルタス家の当主はアカネイア王として頂点に立った。にも関わらず100年後のニーナの時代には有力貴族としてアカネイア王家の臣下となっている
 
 カルタス王の時代にアカネイア王家はアルテミスしか残っておらず、カルタス王の後見無しには存続すら不可能だった。この時のカルタス家とアカネイア王家の力関係は歴然としている。
 なぜカルタス家はアカネイア王家にならずにアカネイア王家の臣下の座に留まったのか?
 
 もう一つ。何故カルタス王ほどの実力者が雇われ店長のような地位に抑えられたのか?
 カルタス王は解放戦争勝利の英雄として、アカネイアの“王”として圧倒的な発言力があったはず。

 ここで仮説を立てる。本当はカルタス王あるいはカルタス家の発言力は絶対的なものではなく、その権力はかなり限定されていたのではないか。
 
 ではカルタス王の権力を抑えたのは誰なのか?
 アカネイア王家=アルテミスではない。夫であり後見人であるカルタス王を潰すわけにはいかないからだ。
 そうなると考えられるのはカルタス家以外の有力貴族しかない。いや、有力貴族“たち”と言った方が正確だろう。彼らは元々同じアカネイア王家の臣下として自分たちと同格だったはずのカルタス王並びにカルタス家が自分たちの上に立つことを良しとしなかったのだ。
 カルタス王の実力がいかに高くても、他の有力貴族全ての力を結集すればその力はカルタス王並びにカルタス家を上回る。彼らはカルタス王がアカネイア王家簒奪をしないように見張っていたのだ

【カルタス王擁立の謎】
 そもそもカルタス王をアルテミスの夫そしてアカネイアの王にと望んだのはアカネイア貴族たちだ。なぜ彼らはカルタス王擁立に動いたのか?
 まずアカネイア王家の血筋を守る為にアルテミスの夫が必要だった。そして大戦の傷跡深いアカネイアの戦災復興を担う王が必要だった。
 それなりの血統があって、解放戦争の英雄として民衆の支持を受けていたカルタス王が最も相応しかった。しかもアルテミスの権威を高めて解放軍を組織し政治家としての実績もあった。アルテミスの夫としてそれなりに釣り合う血統に英雄としての民衆の支持、戦災復興を担えるリーダーシップと政治力、それらを兼ね備えたカルタス王が最も相応しいというよりも、カルタス王しかいなかった。
 カルタス“王”の誕生は当時の誰からも必要とされたのだ!

【貴族たちの団結】
 しかしアカネイア貴族たちは、カルタス“王”の必要性を認識していながらも、カルタス家の者が突出することに危機感を抱いていた。そして彼らは『カルタス王によるアカネイア王家簒奪を阻止せよ!』という正義の下に団結した。
 解放戦争では竜族に対抗する人間の団結の象徴だったアルテミスが、平和な世ではカルタス王の突出を阻む勢力の団結の象徴となったのだ。

【カルタス王の弱体化】
 アカネイア貴族たちは王家への忠誠を盾に、あらゆる手を尽くしてカルタス王の牙を抜いていった。

 まずはカルタス王の弟マーロン伯をオレルアン平定に向かわせることで、カルタス王の手元からカルタス家の戦力を離して行った。かつての片腕オードウィンもグルニアへと引き離された。もしかしたらカルタス王からオードウィンを離反させる工作もされたのかもしれない。とにかくカルタス王の手元の戦力が減ったことで、彼自身の本国に於ける影響力は確実に落ちた。

 各地の英雄アンリ、オードウィン、マーロン、アイオテにカルタス王と同じ“王”の称号を与えたのもカルタス王弱体化工作のひとつだろう。“王”の称号をアカネイア王家の正統なる当主(この時代はアルテミス)が与えるというルールはこの時に定着したと考えられる。カルタス王に対し『あくまでもアルテミス様に任命された、つなぎの王に過ぎない!』と強調すると共に、同格の“王”を増やすことでカルタス“王”の地位を相対的に下げる狙いがあった。
 確かに大陸全土に広がり、広大になり過ぎたアカネイア王国を効率良く統治するのに、アンリら各地の英雄を地方の首長に任命して、ある程度の自治権を認める必要はあったが、わざわざカルタス王と同じ“王”の称号を与えたのはカルタス王の地位や権威を下げるために他ならない。カルタス王は不服だったかもしれないが、彼の発言力を担保する軍事力はオレルアンやグルニア平定に向けられていて、手元に無いのでどうしようもない。
 それにこの政策はアカネイア王家の権威を高める目的もあったので、カルタス王には反対することは出来ない。もし反対すれば、アカネイア王家簒奪の疑いをかけられて失脚につながるからだ。カルタス王はアカネイア王家の忠臣としてその権威を高めることで、解放戦争に勝利し“王”の座を得た。カルタス王の権力の正統性はアカネイア王家あってこそなのだ。それゆえに“アカネイア王家の為”という正義に縛られることになった。

【高められたアカネイア王家の権威】
 アカネイア王家は解放戦争において一度は滅びかけたが、カルタス王がアルテミスを人々の団結を導く光の象徴として祭り上げたために、戦前を遥かにしのぐ権威を得た。そしてその権威はカルタス王を抑える為の正義として利用されたために、さらに高まった。こうしてアカネイア王家は神に近い絶対的な権威となった。

【そして暗黒戦争へ…】
 解放戦争から約100年は大きな戦乱も無く平和な時代が続いた。当初英雄たちの新王国の脅威が懸念されていたが、各国は『聖王国の盾となる』を国是としたアリティアのように絶対恭順を通したので、いつかその脅威は忘れられてしまった。しかし不満は燻っていた…
 一方平和なアカネイア本国では貴族たちが権力闘争に明け暮れていた。どこか突出して勢力を高める一族が出ると決まって他の貴族たちがアカネイア王家の正義を盾に取り、団結し、潰していた。そのため、いつしか有力貴族たちの間には奇妙な均衡が生まれていた。それがカルタス、ノア、シャロン、ベント、ラングの五大貴族である。頂点たるアカネイア王家には権威はあっても実際の権力は無かった。
 この状況では、復活したメディウスを中心に打倒アカネイア勢力が出てきた時、それに対抗出来るリーダーは存在しなかった。ドルーアの宣戦布告からパレス落城までの約4年間を空費した。(参考:ドルーア視点の暗黒戦争) 

 しかしアカネイアは再び蘇った。カルタス王の再来・草原の狼ハーディンによってである。

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この記事へのコメント

togege
2012年08月10日 22:25
カルタス王という、どマイナーな人物を題材にして読者が離れないか少し不安です。
しかしハーディンを書くためには彼に大きな影響を与えたカルタス王の事は大きく取り上げる必要があったのと、アカネイアの歴史上マルスに匹敵するほど偉大な英雄の事を是非書きたいとも思いました。
ロギー
2012年08月13日 20:48
カルタス王の実力と不安定さがわかって良かったです。
でも、そんなごたごたを抱えながら七王国は100年も平和を教授してたなんて凄いですね。

ただ、私やlineさんの文章にコメントをお願いします
togege
2012年08月13日 22:05
<ロギーさん
返事が遅れ、失礼しました。コメントをまとめて書いてる途中で力尽きてしまいました。読んだらさっさと返事を書くべきですねm(_ _)m
togege
2012年08月13日 22:11
【追記】
カルタス王はカルタス家出身の王という意味なので『カルタス王は一人ではない可能性があります。』
例えば、解放戦争に勝利しアルテミスと結ばれた1代目カルタス王は短命政権で、その意志を継いだ弟のマーロンも失脚してオレルアンに追放されたとか…。後にカルタス家は名誉を回復してアカネイアに復帰したとか…というのはどうでしょうか?
くそまじめ
2017年03月18日 20:22
アカネイア再興以前から王の血族が神聖視されていたと仮定した場合、王家は特定貴族の後ろ盾を必要とせず、アルテミスにもカルタス家による王位簒奪を警戒する動機があるのでは。
その言説によれば…ですが。

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