ドラクエⅡ考察~ロト戦記6・神速の英雄

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【神速】
 大灯台を落として以来のローレ王子たちは文字通り世界を股にかけ、各地に足跡を残していった。
 精霊の紋章探しにラゴス捜索、ザハンの聖なる織機をテパに届ける、ロトの武具の収集、ローレシアで囚われたハーゴン教団幹部を自らの手で処刑など、世界のあらゆる場所で様々な活動をごく短期間で行った。

 では王子たちの活動は同時代の人々の目にはどう映ったのか?
 まず当時の世界の常識ではありえないスピードで世界中を回っていた事が挙げられる。ムーンブルクやローレシアら陸世界に生きる人々には、船を使って人や物を世界中に動かす海世界のスピードも陸世界の人々の常識を大きく超えていたが(多くの人々にはその認識すら無いが…)、王子たちの移動スピードはその海世界の常識さえもぶっちぎっていた。
 その機動力のタネは実際のゲームをプレイした我々は知っている。
 ルーラの呪文か?いや違う。同じ効果を持つキメラの翼が各地の道具屋で売られている以上、その世界で生きる人々の常識を超えてはいない。それにドラクエ2でのルーラは“ふっかつのじゅもん”の祝福(?)を受けた地に戻るための移動手段に過ぎない。ドラクエ2世界には他に船を越える移動手段はある。そう“旅の扉”である。この旅の扉は一般人の常識には存在しなかったと思われる。(参考:旅の扉の謎)王子たちが配下の者を連れずに三人だけで行動していたのは、一部の者しか知り得ないトップシークレットを守るためもあったのだろう。そのおかげもあってか、三人の行動は同時代の人々の目には神速とも言えるスピードに映った。これもまた勇者ロトの子孫の伝説として語り継がれていく。

【影の支援者たち】
 王子一行は配下も連れずに三人で旅をしていたが、決して三人だけでハーゴン軍と戦っていたわけではない。もちろん王子たちには勇者の子孫として並外れた武勇や魔術、知略を持っていた事は疑いないが、人間である以上限界はある。それに彼らはそれぞれ母国の王位継承者あるいは母国再興の希望であり、万が一のことがあっては大変だ。王子たちが死亡するリスクを避けるという目的も兼ねて、王子たちの活躍をバックアップする言わば影の支援者が多数存在したはずである。(参考:呪われし姫君と名も無き英雄ロト戦記3・ローレシアの矜持小説・復活の呪文
 影の支援者たちの活動といえばゲーム中で見えるのは情報集めや船の操縦だろうが、それ以外にも彼らの活動は多岐に渡る。王子たちの活躍を各地に宣伝する吟遊詩人、王子たちの行く道を先行して魔物と戦う露払い役、町を守る兵士、各地の商人や有力者との折衝役…等々。
 影の支援者たちは王子たちを英雄にするために活動していたともいえる。

【ルーラと船、通信】
 ルーラで一緒について来るように見える船は実際どうなのか?遠くで唱えられたと同時に空を飛んだり、瞬間ワープでもしているのだろうか?だとしたらトンでもないテクノロジーである。
 こういう考え方はどうだろうか?
 王子たちを乗せた船と船員たちはその場に残り、王子たちの帰還を待つ。王子たちがルーラの呪文で移動した場合、移動した先で待機している船は元の船とは別の船なのではないか。ドラクエ2の主人公たちは仮にも王族である。船を複数使えても不思議は無い。
 では残された船はどうなるのか?王子たちがルーラで移動した時点で何らかの手段で連絡を受け、手近な拠点に帰還したと考えられる。連絡手段は魔法による通信だろうか?そんな現代人的発想のハイテクでなくとも、飛脚、早馬、伝書鳩、狼煙などローテクな手段はいくらでもある。シナリオ冒頭で傷ついたムーンブルク兵が自らの足でローレシアまで来たことや、ハーゴンの王子たちへの対応の遅さから考えると、ドラクエ2世界での通信技術はかなりローテクだったのではないか。
 船による移動や情報伝達という点でも、ゲームの表面に出ない多くの人々の活動があったのではないだろうか。

【ハーゴンの対応】
 世界各地で躍動する王子たちに対するハーゴン側からの動きは一切無かった。ただ受身で大灯台~満月の塔~海底洞窟~ハーゴンの神殿と一方的に滅ぼされただけだった。ハーゴンもまた王子たちの神速について行けなかったということだ。
 ハーゴンの動きの鈍さの要因は何か?
 一つ目はムーンブルク襲撃の際に予想外の被害を受けて、その立て直しに手間取った事だろう。いや、ハーゴン軍の立て直しよりも王子たちの攻めが圧倒的に速かったとも言える。まさに神速である。王子たちのハーゴン討伐の遠征はかなり短期間だったのではないだろうか。
 そして、ハーゴンは『情報』をひどく軽視していた。それはハーゴンの神殿で王子たちと対峙した時の台詞『誰じゃ? 私の 祈りを じゃまする者は? おろかものめ! 私を大神官ハーゴンと知っての おこないか!? 』からも明らかだ。ハーゴンは王子たちにも勇者ロトの伝説にも関心が無いようだ。もしかしたら王子たちの事を知らない可能性すらある。ハーゴンは教団の構成員たる神官を世界中に配し、布教や情報収集をするネットワークは持ってはいたが、有効活用していたとは言えない。
 また特に海世界に対しては本当に無関心だったらしく、海にはハーゴン軍所属といえるモンスターはホークマンとガーゴイルしか存在せず、しかも彼らは単体で王子たちに戦闘を仕掛けてくることが多い。その特性を生かした偵察・情報伝達をすべきなのに無謀な戦いを挑んで来るのは、軍としての統制を欠いているというしかない。いや、情報軽視のハーゴン軍は最初からそのような指示など出してはいないと考える方が妥当だろう。

【プロパガンダ】
 支援者たちの活動として最も重要だったのは、王子たちの活躍を世界中に広める広報活動である。主な内容は王子たちの武功、ハーゴンの脅威、ロトの勇者の物語だろう。プレイヤー視点では当たり前に存在していた勇者ロトの物語だが、実は世界的には特に海世界ではあまり知られていなかった。知っていたとしてもロト伝説など時代遅れの国アレフガルドのカビの生えたおとぎ話に過ぎなかった。そしてハーゴンの脅威も海世界ではイマイチ知られていなかった。(海世界でのハーゴンについては後に考察する予定)
 ロト伝説が後世に伝わったのは王子たちの武勲があってこそだが、それ以前にハーゴンの脅威という前提条件が世界中で共有されていなくてはならない。つまり王子たちのプロパガンダはハーゴンの脅威→王子たちの武勲→ロト伝説の順で伝わったのだ。そして当時、ごく限られた人間以外は全く意識しなかったが、これらの情報の伝達は神速の英雄である王子たち自身よりもさらに速かった。例えばローレ王子旅立ちのニュースが早くもリリザに伝わっていたことなど。

 王子たち自身が行った広報活動もある。それはローレシアでの神官処刑とムーンペタでのべビル処刑である。
 特にムーンブルク王女自らが悪魔族を血祭りに上げて見せたのは大きな意味を持つ。ムーンブルク人にとっては翼を持つ悪魔族は空から来た災厄で、恐怖そのものだった。この時からムーンブルク人にとって悪魔に狩られる恐怖に怯える日々は終わりを告げた。これ以後は逆にハーゴンや悪魔、邪教徒たちを追い詰めて滅ぼすのだという機運が盛り上がった。

 悪魔に魂を売り、ムーンブルクを滅ぼし、その邪悪な魔手を全世界に伸ばそうを企む大神官ハーゴン。その脅威から人々を解放する勇者ロトの子孫たちという物語は全世界に広まりつつある。そしてローレ王子を中心にしたハーゴン包囲網は徐々に狭まってきている。

 次に解放すべきはテパだ。

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この記事へのコメント

togege
2013年02月08日 22:29
ルーラで船が付いて来る事については2特有の事情ですね。シリーズ中の他の作品についてはそれぞれの事情があるのでしょう。
あらた
2013年02月09日 22:49
プロパカンダに関しては同盟者であるカミの教会勢力の力も半端なかったんっだろうなと思いました。

逆に今回の話を読んでハーゴン教団って案外しょぼかったんだなとは思いました(笑)。それでも地方の群雄ともいえる存在ですが。
togege
2013年02月09日 22:59
>あらたさん
教会は各地方の町で庶民から貴族の生活に密着していますから、情報戦能力は半端ないですね。
ハーゴンがショボいのは仕方ない部分もあります。山奥の神殿に引きこもっていたら、どうしても視野は狭くなります。文字通りのお山の大将です。
ああああ
2013年07月31日 22:19
てきてうに検索してたどり着きました。
面白くて最初の記事から一気に読みました。
続きを楽しみにしてます。

無茶ぶりだと思うけど、上下の世界を含めて各地で言語と貨幣が統一している謎の検証を読めたら幸せです。
誰が何が暗躍したのか?
もし、理論建てが出来たら、ぜひ読みたいです!
togege
2013年07月31日 23:39
>ああああさん
コメントありがとうございます。
確かに上下の世界含め、言語と貨幣が統一しているのは気になりますね。
ぜひ考察してみたいものです。
nedvedpavel
2013年08月05日 23:45
言語と貨幣(ついでに物価も)が統一されているという事はそこまで世界が広くないという事でもあるのでしょう。
例えばアレフガルド東部やローラ海峡(仮)の海底トンネルも当時の技術や財政力では短いものしか作れないでしょうし。

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