FE考察~覇王マルスの人物像・後編

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 前編ではマルスの常勝将軍としての顔について考察した。今回『ファイアーエムブレム』の中でもマルスの“正義”と並んで強調されている“恋愛”という側面からマルスの人物像を考察する。

【シーダとの結婚】
 マルスは英雄戦争終結後、タリスの王女シーダと結婚した。これは史実である。

 では何故マルスはシーダを選んだのか?

 アリティアと辺境の島国タリスとでは家格で釣り合わない。アリティアにとってメリットのある相手といえば、中央政界とのつながりを作るならアカネイアの貴族の娘が良いだろう。マケドニアのミネルバ・マリア、グルニアのユミナ、グラのシーマなど周辺国との同盟は互いにメリットがありそう。それらと比べてずっと格下ではるか遠くの島の小国タリスのシーダを后に迎えるのはアリティアにとって政略的にメリットが無い。タリスは海の向こうとの中継貿易の拠点として案外栄えているのかもしれないが、それでもあまりに遠過ぎる。アリティア側からのメリットを見出すのは難しい。
 タリスから見てどうか?同盟関係を結ぶにはいくらなんでも遠過ぎる。タリスから見ても政略結婚としてのメリットは見いだせない。しかしタリスの王はグルニアのロレンスともつながりがあり、距離の壁はあまり気にしない人物だったのかもしれない。辺境の島国の王でありながら、戦乱に乗じて中央政界に進出しようという野心を抱いていた可能性はあるかもしれない。マルスの亡命を受け入れる条件としてシーダとの婚姻を申し出た可能性は十分ありえる。(タリスについては後ほど詳しく考察する。)

 だがマルスとシーダの正式な婚約は暗黒戦争終結後であった。マルスの亡命時点ではシーダとの婚約は断れない立場だったかもしれないが、あくまでも“仮”婚約だったので、破棄する事は可能だったのではないか。
 ニーナより炎の紋章を賜った後のマルスの活躍は著しい。戦乱のどさくさとはいえニーナとの接点を得て、武功も挙げたマルスは平時ではありえない飛躍のチャンスを得た。そしてアンリの再来としての人気と実力を兼ね備えたマルスは結婚相手を選べる立場だっただろう。マルスはシーダとの婚約を蹴って、もっと条件の良い相手と婚姻関係を結ぶ事は可能だったはずである。また急上昇するマルス株の恩恵を得ようと縁談を持ちかけてくる者も少なくなかったはずである。
 逆に言えば、マルスは数々の魅力的な政略結婚を蹴ってシーダとの結婚を選んだのだ。

 シーダは既にタリスでマルスと結ばれていて、マルスの子を出産していた為にタリスとの関係を切れなかったというトンデモ説も考えられる。二年あれば妊娠出産は十分可能である。まさに若気の至りといえよう。しかしいくらなんでも赤子を産んだばかりのシーダがペガサスナイトとして従軍、出陣するのは無理があるだろう。

 マルスとシーダの結婚は純粋な恋愛結婚だと結論付けても良いだろう。
 
【マルスが示した新時代の価値観】
 シーダとの恋愛結婚を貫き通したマルスは自分の行動で新たな価値観を世に示した
 それは『愛し合う男女は結ばれるべき!』である。
 そしてもう一つ。『身分や国の壁を越えた恋愛・結婚』だろう。
 この価値観はアンリの英雄物語とともにアルテミスとの悲恋の物語を聞いて育った事が大きく影響しているのだろう。
 マルス以前はそうではなかった。例えばアルテミスやニーナの悲恋の例がある。彼女たちのエピソードが示す当時の価値観は『高貴な身分の者の恋愛は自由だが、結婚は家格に相応しい相手と国や家の為にすべし!』である。

 アカネイアの民衆は高貴な者の恋物語を好むが、同時に自分の感情よりも国や家に尽くすべきと考えている。また身分や立場の壁を越えた恋物語も喜ぶが、同時に人は分相応な結婚をすべきと考えている。
 アルテミスやニーナの悲恋は“悲恋だからこそ”快く受け入れられたのだ。アルテミスやニーナはアカネイアの民衆が望む恋愛物語を示してみせたとも言える。逆にハーディンは“ニーナと結ばれたからこそ受け入れられなかった。”田舎育ちの成り上がり者めがという感情だろうか。ハーディンにしてみればアカネイア王家を守るための結婚なのにと、随分理不尽な話であるが人の感情とはそういうものかもしれない。

 そのような価値観の中では光の王子マルスを誘惑したタリスの田舎娘シーダへの風当たりも相当厳しかったに違いない。シーダを“傾国の美女”という捉え方をする者も少なくなかっただろう。『ファイアーエムブレム』でも取り上げられている、女の魅力で敵を寝返らせるエピソードはシーダの悪女としての側面を匂わせているとも言えなくない。
 マルスは当時の価値観に基づくシーダへの厳しい風当たりから彼女を守っていたのだ。

【その他の恋愛】

 国の壁を越えた恋愛・結婚は大陸統一の覇王マルスとしてもおおいに奨励したと考えられる。国際結婚ではなく国内結婚なのだから。マルス自身がその成功モデルを示している。
 その例として挙げられるのがアリティア騎士アベルとマケドニアの白騎士エストのエピソードである。しかし残念ながら、後に二人は別れることになるそして、国際結婚のエピソードは他には無い。国際結婚を奨励したいマルス王朝としてはもっと多くのエピソードを紹介したいはずだが、失敗例を出さざるを得ないほど実例が少なかった。
 このエピソードが示すのは国の壁を越えた恋愛・結婚は難しいという厳然たる事実である。当時のアカネイア大陸の価値観において国の壁は限りなく高い。マルスは確かに時代を変えたが、だからといって急に人々の価値観も変わるかと言えば、答えは否である。
 当時の価値観を越えたマルスの超人ぶりを示すエピソードでもある。
 
 身分の壁を越えた恋愛・結婚のエピソードはいくつかある。
 ミディアとアストリア、エリスとマリクのケースは多少の身分差はありそうだが、貴族同士と思われるので“身分の壁を越えた”は言い過ぎかもしれない。
 レナ(貴族)とジュリアン(盗賊)、シ―マ(王族)とサムソン(元剣闘士の傭兵)はまさに身分の壁を越えた恋愛の例かもしれない。どうとでも取れるエンディングではあるが、結ばれた可能性は高い。ただしレナもシ―マも身分を捨てているのは断っておくべき事柄。
 また『ファイアーエムブレム』でわざわざ取り上げられているのは、身分の壁を越えた恋愛・結婚は当時の常識を越えた珍しい事例だということ。当たり前の事であればわざわざ取り上げる必要もないからだ。
 また身分の壁を越えた結婚といえば、ニーナとハーディンを忘れてはいけない。そしてこの結婚は不幸な結末をもたらしたとも。ニーナとハーディンの結婚の真実についてはのちほど…

 やはり身分の壁を越えた恋愛結婚を成功させたマルスは超人だといえる。

【まとめ】
・マルスとシーダの結婚に政略的価値は無い。
・『たとえ身分や国、立場の壁はあっても、愛し合う男女は結ばれるべき』
・マルスはシーダとの恋愛結婚で新時代の価値観を示した。
・人の価値観はそう簡単には変わらない。それが現実。
・マルスは超人!

 もちろんマルスは急に現実的な価値観を変えられるとは思ってなかっただろう。しかし長い平和の時代が人の心を少しずつでも変えてくれることを願ったのでは…

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この記事へのコメント

cvhiryuu
2014年01月28日 23:32
マルスとシーダが相思相愛だったことは間違いないでしょうが、結構政治的なメリットもある結婚だと思います。

①マルスは恩義を大切にする人間であるという宣伝
恩義や忠誠を奉げた見返りが保障されるのなら、懸命に働く部下も増えるでしょう。

②実力、実績主義のタリス王国の方針を継承する宣伝
シーダの実家のタリスでは元奴隷のオグマを隊長に抜擢しています。この方針は人材を集める宣伝になりますし、実力主体で成り上がった旧ハーディン派を安心させる効果も期待できます。

幸いにも反対強硬派はハーディンが始末していますし、ミディア達も周りの味方が少ない、戦勲からそこそこ優遇される保証があるのですから、下手に反抗はしないでしょう。
togege
2014年01月29日 01:12

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