FE考察~アリティアの内紛

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FE考察~アリティアの内紛
 今回はこれまでの考察で度々触れられてきた、アリティアの内紛についてまとめたいと思う。

【アリティアの実情】
 ゲーム中でのアリティアは小国ながらも主人公マルスの元に忠誠心と能力の高い騎士たちが集い、ドルーア帝国や神聖アカネイア帝国のような大国相手に人の団結心で対抗した国という描かれ方をしている。
 しかし、アリティアは諍いや裏切りの多い土地でもある。まずアラン村とサムソン村の確執、アベルの離反、グラの分離独立。穿った見方をするとアンリから弟マルセレスへの代替わりも何らかのお家騒動があったのでは?と勘繰ってしまう。
 ファイアーエムブレム、特に紋章の謎は英雄王マルスの正統性を主張するためのプロパガンダという側面があるのでマルスの家系の都合の悪い場面はあまり書かれないのだから、これらは氷山の一角に過ぎないと言える。つまり実際はもっとあったと考えるべきなのであろう。
 アベル説得のイベントで特に顕著だが、ファイアーエムブレムではマルスの理想とする新時代の価値観が込められている。一つは愛するもの同士は身分や立場を超えてでも結ばれるべき、もう一つは騎士は主君に忠義を尽くすべきだということ。こうなって欲しい理想を殊更に強調する理由は明らかだ。
 現実は決してそうではないから。

【内紛の種1―英雄王アンリの突出】
 アリティアは元々独自性の高い開拓都市の集まりに過ぎない。アラン村とサムソン村のように開拓都市同士の諍いも珍しくない。そこで英雄アンリがアカネイアの後ろ楯で一つに国として上に立ち「アリティア(アンリの国)」と私物化したらどうか、面白くないと思う開拓民は少なくはないだろう。
 アリティアに反感を持つ開拓都市の一つでアカネイアに上手く取り入ってその援助と独立を得たのがグラ王国なのだろう。アカネイア視点ではこの地方をまとめてコントロールする必要性と英雄アンリの処遇という問題を同時に解決するためにアリティア王国を作ったが、アリティアの力が大きくなり過ぎないためのカウンターとしてグラを建国したのではないか。アカネイアとアリティアの間という立地も都合が良い。
 暗黒戦争の終結後すぐに傀儡の王女シーマを探し出して再興させたのもそのためだろう。ハーディンとマルスの仲がどうこうではなくアカネイア王国としての基本的な外交方針を踏襲したに過ぎない。
 そもそものアイデンティティがアンチ・アリティアのグラがアリティア絡みの戦乱で悲劇に見舞われるのは必然であるとしか言いようがない。

【内紛の種2―アリティア騎兵のルーツ】
 アリティア王家が開拓都市を治めるにはアカネイアの後ろ盾だけでなく実際の武力とアリティアの守護者としての正統性が必要だ。ゆえにアリティア王家は常に最前線で国を守る姿勢を示さねばならない。
 アリティアの北の砦が並んでいる所はかつて北の蛮族から開拓した土地を守るための最前線となっていた。おそらくカダインやオレルアン、グルニアの方から来た騎馬民族ではないかと推測される。アリティア王家率いる開拓民はこの砦を拠点にアーマーナイトとアーチャーを中心とした騎士団で防衛線を築いたのだろう。元は同じ国だったグラ王国の戦い方をイメージすると分かりやすいかもしれない。
 敵を味方に引き入れる事が得意なアリティア王家は、北から襲ってきた騎馬民族の一部を味方に引き入れたのではないか。アリティアは味方に引き入れた騎馬民族を直属の騎兵隊として組織し、功績のあった者を貴族=騎士に取り立てた。それがジェイガンやカイン、アランたちのルーツだと考えられる。彼らは開拓民を守るために懸命に戦い、信頼を勝ち取り、アリティア騎士団の中枢を担うまでになった。この騎兵隊の存在の有無がアリティアとグラの違いである。
 開拓民と騎馬民族、元々は仇敵同士。決して生産性の高い土地とはいえないアリティアで自分たちが食うだけでも精一杯なのにさらに仇敵の騎馬民族も受け入れるなんてと、同じアリティア国民としてまとまるには葛藤はあって然るべきだろう。
 開拓民と騎馬民族の対立だけでなく、元からあった開拓民同士や騎馬民族同士の対立も残っている。アリティアは内紛の種ばかりである。

【内紛の種3―貿易商】
 開拓民たちが反感を持つのは大国アカネイアに取り入る輩だけでなく、後に台頭してきた交易を生業とする層ではないか。マルスの時代だと既に開拓出来る土地は残り少なく、海洋貿易による収入の割合が大きくなるにつれて、旧来の開拓民達の立場は弱くなるばかりである。そこに危機感を抱いた者たちが火種となるのは自然な成り行きだろう。
 騎士アベルは暗黒戦争の後に軍を退き小さな店を開いたとあるが、彼のバックボーンはジェイガンやカインのような根っからのマルス直属の騎士ではなく、商業系なのではないかと考えられる。英雄戦争でアカネイアに寝返ったとされているが、根っからのマルス派のカインとは違う損得の立場があったのだろう。
 騎士ドーガは新暗黒竜の序章でタリスに逃れる船の手配をしていたことから、貿易商系とのつながりの強い人物と考えられる。重い鎧を脱げば、海の男のような風貌に見えなくもないか?

【アリティアの国体】
 「アリティア王国はもともと大陸中央の湿原地帯にあった開拓都市が、第一次ドルーア戦争の後にアカネイアの援助を得て独立した(デザイナーズノート#1)」とされているが、元々この地方を開発していた開拓都市を大国アカネイアの圧力によって強引にひとまとめにして、アリティア(英雄アンリの国)としたというのが実際のところではないだろうか。それはきっと開拓民の望んだ形ではなくアカネイアの都合(英雄としての名声が高まり過ぎたアンリの処遇、開拓都市群やアンリをコントロール下に置きたいなど。)が多分に反映されたものと考えられる。
 アカネイアの支配下に入ることは独立性の高い開拓民の気質としては受け入れ難いものではあったが、大国アカネイアに正面切って楯突くのは得策ではない。アカネイアとしても本国の復興に力を注ぎたいので戦争は避けたい本音もあり、双方の落とし所として宗主国と属国という上下関係を確定させた上での独立を承認するという妥協の産物がアリティア王国だったのではないか。

 アリティア国王即位には宗主国アカネイアの承認が必要だと考えられる。なぜなら実質的にはマケドニア王だったミシェイルの呼称が王子だったからで、父王を殺してアカネイアに楯突いたミシェイルは公式に王と認められることはない。また、暗黒戦争終結後アリティア、グルニア、グラ、マケドニアの王位が空位だったこともハーディン王の承認を得られていないから。
 なのでアリティア王家の中でもアカネイアの意に沿わねば王座交代もさせられるだろう。これはあくまでも推測に過ぎないが、アンリから弟マルセレスへの王座交代の裏には何かの事情でアカネイアを怒らせたアンリからより従順なマルセレスへの王座交代の意向が働いたのではないか。あるいはアンリへの不満が限界を超えた開拓民によりアンリからマルセレスへの王座交代の政治工作があったのかもしれない。

 アリティアの王は開拓民から見てアカネイアの力をバックに偉そうにしている奴という側面はあるが、実際は開拓民とアカネイアの間で双方のシビアな調整役を買って出たとも言える。「聖王国の盾となれ」を国是に立てつつも開拓民の利益を尊重する、デリケートな調整役としてのアリティア王の基本姿勢を確立した可能性が高いのは英雄アンリよりも弟マルセレスの方が向いているような気がする。
 マルスが若年ながらも優れた外交手腕を発揮したベースにはアリティア王子として受け継いだ帝王学の賜物だったといえる。

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この記事へのコメント

togege
2018年01月28日 15:26
アベル、カイン、ドーガについてはもう少し考えていることがあったのですが、本記事の主題から離れてしまうので、泣く泣く削りました。
またグラについてももう少し書けそうです。
こんな内紛の種だらけのアリティアをなんとか治めているアリティア王家って結構凄いなというのが、本記事を書いてみての感想です。
maki
2018年01月28日 20:10
 確かに色々と抱えていそうな国です。でも、よくよく考えると、この時代を通して一枚岩でいられた国がどれほどあるでしょう?ドルーア(ゲーム上の都合でナーガ系は別国家)と、いいとこオルレオンがせいぜいじゃないでしょうか?あそこは何のかんのいっても王の下一致団結して動いています。ひょっとするとグラもそうかもしれませんが。でも、シーマ自体があれだし……そう考えると、明確なアリティア系の敵がいない分まだましな方な気がします。
 しかし、この地形でドラゴンナイトを導入しなかったのは謎。マケドニアとの関係が悪かったのかな?無意味に特攻させるゲームじゃまともに使えなかったけど、後方遮断や偵察など、少数でもあらゆる点で役に立ちそうなのに。資金力があるならまずこちらに使うべきだろうに。
おもち
2018年01月29日 00:09
マルスの名前もアンリではなくマルセレスをもじったような名前ですね
表舞台から消えたアンリの名前似の兄弟がいたのか?
それともマルセレスがもじってあやかりたくなるような優秀な人物だったのか?

実直だが政治に向かない兄アンリとそんな兄の足りない物を持っている弟マルセレスというイメージです
あらた
2018年01月29日 01:49
更新お疲れ様です。
ドーガが脱出用の船を手配した件に触れていますが、カインも紋章第2部のソウルフルブリッジで脱出用の船を手配しているんですよね。逆に言えば危急の際にそれを手際良く行えた事が2人がマルス王朝の重鎮に成り得た所でしょうか。
アンリからマルセレスの代替わりのゴタゴタはアンリがなんとかアカネイアの支援と英雄の威光で統治するも、アリティア及びグラ全土から絶対的な支持を集めている訳でないと考えるとあり得る事ですね。マルスとシーマははとこの関係らしいですが、マルセレスの代あたりでの巧みな婚姻策といった所でしょうか。
肉味噌
2018年01月29日 18:21
メディウス討伐後、約37年生きた英雄アンリも加齢により武勇は衰えたでしょうし、アルテミスを想うあまり妻を娶らない頑迷さもあって、晩年のアンリのカリスマはそれほどでもなかった、という解釈もできますね。
togege
2018年01月29日 19:38
みなさん、早速のコメントありがとうございます。
> makiさん
この世界は国として一枚岩なトコはなく、地方豪族がそれぞれの利益に則って集まったり裏切ったりするので、各国の王の苦労がしのばれます。
竜騎士については、きっと餌の問題などマケドニア以外で飛竜を飼い慣らし維持するのは非常に難しかったのかもしれません。

>おもちさん
アンリは竜殺しの英雄あるいは乱世の英雄としてのカリスマ性はあれど、為政者としてはマルセレスの方がずっと優れていた可能性が高いですね。

>あらたさん
猪突猛進の猛牛と呼ばれるカインですが、戦略眼や戦術眼があり実務能力も高いデキる男です。力ではなく技速さの成長率高いし。

>肉味噌さん
開拓民の皆さんはきっと自分たちの代表には自分たちの利益をもたらすことを求めたリアリスト気質があるのでしょう。グルニアやマケドニアほど武勇によるカリスマ性を重視しないのかもしれません。ロマンスを好むアカネイアとも違いますね。
あらた
2018年01月30日 19:32
結構興味深い内容だったので色々と考えてみましたが、

①アリティアの開拓都市

基本的に開拓都市・村は現実だと開拓団という形である程度同郷者で纏まる事が少なくないですが、少なくともアンリの出身である開拓都市はアルテミスを匿った事やそれでドルーアから圧力をかけられた際に最後まで抵抗する姿勢を見せている事からアカネイアからの移住者中心であったと思います。
アンリ自体はアカネイアがルーツ、あるいはアリティアで生まれたのではなくアカネイアで生まれてから移住した可能性も考えられ、その場合婚約者といかなくとも子供時代にアルテミスと面識があった可能性はあります。逆にいえば他の開拓村のいざこざの一因はそれぞれの出身で固まっていた故ですね。

②アリティア騎兵

少なくともマルスの時代はアリティア=海洋交易国家という感じですが、アンリの頃はまだそうでもなく陸路を中心とした交易だったのではと感じます。
現実の歴史でも騎馬民族=遊牧民は陸上交易に大きく関わっていますが、隊商の護衛役としてアリティアは騎兵を重用したのではないかと思います。後に海洋へと進出していきますが彼らは立場を追われた訳ではなく諸国を廻った経験の蓄積で上手くシフトしたのでしょう。
またジェイガンの特徴である棘の鎧は荒々しい騎馬民族だった頃の名残でしょうか。
アリティアを襲撃したり隊商を襲ったりしたのは北斗の拳に出てくる荒くれたチンピラみたいな感じの騎兵達でそれを圧倒的な力で打ち従えるアンリという図式が思い浮かびました。
あらた
2018年01月30日 19:45
③アリティアとグラ

反アリティアがアイデンティティのグラですが、マルセレス即位後の関係はマルスとシーマがはとこという関係を考えると息子マリウスにグラ王家の娘を迎えている、あるいは自身の娘を嫁がせているという事が考えられます。これがマルセレス主導かアカネイアかグラの主導かは不明ですが、兄弟国という呼ばれ方をするぐらいには表面的には上手くはいって
いたとは思います。とはいえ中世ヨーロッパの価値観ならマリウス妻がグラ王女だったらマルスがグラの王位継承権を得ることになり、グラ王家にマルセレスの血が入っていたらジオルにアリティアの王位継承権が得られる事になります。ジオルによるグラの裏切りはこの辺の要素も入っていたと思います。

④アリティア家臣団

アベルは初代暗黒竜では小狡そうにも感じる出っ歯男、以後は女性受けする美形騎士という外見ですが初代暗黒竜の方が実像だったんでしょうね。個人的には秀吉的な目端が利いて弁舌にも長ける軍才にも商才にも長けた男といった感じです。ペガサス三姉妹がバレンシア大陸に来ていたのはバレンシア大陸に交易圏を拡大したいアベルの思惑にも感じます。
ゴードン・ライアン兄弟は弓兵からして比較的古い時期に来た開拓民の末裔だと思います。ジョルジュとの交流から見てもアリティア内ではそれなりの家であったと思います。
lime
2018年01月31日 16:19
考察お疲れ様です。

外伝/Echoesの話題になりますが、パオラとカチュアがバレンシアに航った理由はギースの海賊団に誘拐されたエストを救出する為です。
(ゲームでは全く語られてませんが、アベルの商才はバレンシアにまで伝わっており、ギース一派のアカネイア進出への足掛かりとして、アベルを利用しようと考えていた可能性はあります。
ギースは宰相ドゼーとのコネをもってましたし。)

ギースの海賊団はアカネイアにも勢力を拡大しつつあった事を示す証左な訳ですが、恋人が拉致されたのに一体アベルは何をやっていたのかと。

騎士団を除隊して立場上の柵は無い訳だから、バレンシアに渡った所でマルス達に迷惑が掛かるような事はほとんど無い。

パオラとカチュアが合流したセリカ軍の働きでエストは無事だった訳ですが、紋章でマルスがアベルを説得した場合の会話とかも照らし合わせると、エストがアベルに幻滅した理由が何となくわかる気がします。
cvhiryuu
2018年03月01日 20:37
こうやって見ると、アリティアは「武力と権威で辛うじて纏まっているだけ」なのに双方に「アカネイア」と言う上限を規定する存在が居る点が辛いですね・・・(汗)
「経済界には上限など無い」と国を挙げて経済進出に熱心になるのも頷ける様な。

似たような起源のマケドニアの場合、初代国王アイオテが「アンリと比べると個人的な武勇では劣るも組織力や人望では上」&「アカネイア本国よりもドルーアとの距離が圧倒的に近い」点が王家に強力な武力と求心力を与えたとも考えられます。
アイオテは「両目失明&両手足に障害」を負った状態で戦役を終えたようですが、アンリ程の圧倒的戦闘力が無かった半面、「障害者になった彼を見捨てずに敵から守り抜いてくれた戦友達」が居た証拠でもありますので人間関係ではアンリよりも遥かに恵まれていたように思えます。
マルスはアンリの再来というよりアイオテ2号に近いかも知れません。

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