FE考察~英雄たちの暗黒戦争

画像

 今回は暗黒戦争の勝者ハーディン視点の暗黒戦争について考察してみる。

【アカネイア滅亡】
 ファイアーエムブレム暗黒戦争編は聖王家のニーナを頂点として一枚岩で団結した同盟軍が、足並みの揃わないドルーア陣営を各個撃破していくという物語だったが、開戦時からパレス陥落までは全く逆でドルーア陣営は打倒アカネイアの目的で一致団結していたし、アカネイア側は足並みが揃わず各個撃破されていた。
 アカネイアの五大諸侯のうちアカネイアを守る為に奮闘したのはディール侯シャロンとメニディ侯ノアのみ、属国の中では“聖王国の盾”アリティアのみだった。グルニアとマケドニア、グラは宗主国に反旗を翻し、滅ぼしてまでしている。(参考:アカネイアの秩序)
 何が言いたいか。『アカネイアの秩序は暗黒戦争開戦時点で既に崩壊している。』ということだ。おそらく100年前のドルーア戦争で聖王家の権威は高まってはいたが、多くの有力人物が亡くなっていたこともあり現実的な勢力の弱体化は逃れられなかったに違いない。

 実際はパレスまでの通り道で激戦地にいたメニディ侯ノア(ジョルジュ)とパレス近所のディール侯シャロン(ミディア)はドルーア陣営と戦わざるをえなくて、逆方向でパレスから遠いアドリア侯ラングとサムスーフ侯ベント、レフカンディ侯爵カルタスは参戦に遅れた上にドルーア陣営の電撃作戦であっという間にパレスを落とされ、戦わずして降伏したのではないか。
 年表では600年に暗黒戦争勃発、602年パレス陥落と2年も猶予があり、電撃作戦と呼ぶのはどうかとも考える。しかし602年にアリティアのコーネリアスはドルーアに包囲したパレスの救援に向かいメニディ川の戦いで戦死しているという記述がある。ドルーア軍は既にパレスを包囲していて、アリティアはその後ろから救援に向かう形だ。聖王国の盾が出遅れている間抜けな形でもある。これはアリティアの想定以上にドルーアの動きが速過ぎたのではないか。それまでの約二年間は小競り合い程度の戦いが中心でアカネイアも油断していた裏で、602年の大規模な電撃作戦の準備を水面下で進めていた時期だったのではないか。

【英雄たちのスタート地点】
 マルスとその祖国アリティアのアカネイアでの人気は高い。かつてのアンリの英雄物語やアルテミスとの悲恋の物語も人気の要因だろうが、決定的なのはアリティアが暗黒戦争開戦時にとしてドルーア陣営との戦いの最前線に立ち、コーネリアス王を失った。国是『聖王国の盾となれ』に従い、文字通り命を賭けて宗主国アカネイアに尽くしたからだ。

 逆にハーディンはアカネイアで人気が無い。正史ファイアーエムブレムにおける敗者ゆえの扱いの悪さもあるが、ハーディンが短命政権に終わったのは、ハーディン皇帝がアカネイアの臣民の支持を得られなかった事実もその要因と考えられる。ハーディン不人気の理由としてはその急進的な改革路線だったり(参考:ハーディンの理想)、救国の英雄として成功し過ぎた事による嫉妬(参考:暗黒皇帝の真実)もあるが、決定的なのは暗黒戦争開戦時のオレルアンの態度である。
 オレルアンは主戦場と離れていたこともあり、当初は参戦はしなかったと思われる。それゆえにドルーア陣営の勢力圏外となり、後にニーナの亡命先に選ばれ、その時点でようやく暗黒戦争の戦地になった。客観的に見てオレルアンに責任は無いが、アカネイアから見ればハーディンはパレスを見殺しにしながら後にオイシイ所を掠め取った不届き者なのだ。“忠臣”マルスがこの不届き者を成敗してくれる事を望む者は決して少なくなかっただろう。
 
 暗黒戦争開戦時のポジションが後の統治者となるハーディンとマルス両者の成否を分けることになる。

【ハーディン挙兵時の情勢】
 アカネイアが滅亡して、ドルーアのメディウスを頂点にした新たな秩序が打ち立てられたかというと、そんなことは無い。なぜなら竜族と人間は根本的に異なる存在で、地竜王メディウスが人間社会の頂点に立つことなど不可能だからだ。メディウスを神と崇めるドルーア人なら、メディウスを頂点とした社会を形成することは出来たかもしれない。しかしグルニア・マケドニアは元々竜族に抵抗した人間たちの作った国である。グルニア・マケドニアを併合したドルーア帝国が成立することは有り得ない。
 アカネイア打倒という共通の目的を果たしたドルーア陣営はバラバラの行動をするようになる。特に軍事力と領土的野心の強いグルニアの諸将は旧アカネイアの土地を勝手に山分けし、各地に君臨した。グルニアのルイ王にはその動きをコントロールする力は無いらしく、後にマルスら同盟軍に各個撃破されることになる。政治的にグルニアに後れを取ったマケドニアは一発逆転を期してオレルアンまで遠征軍を進めた。
 聖王国アカネイアという絶対的権力による秩序を失った大陸は土地を奪い合う戦国時代に突入した。当然治安も悪化し盗賊が横行した。(中でもサムスーフ地方のデビルマウンテンは有名だ。)
 聖王家の唯一の生き残りであるニーナの名の下に権力を一元化し大陸の秩序を取り戻すこと、それはハーディンの正義であった。

【ハーディンの功績】
 亡命したニーナを受け入れたオレルアンのハーディンはニーナを盟主に据えた同盟軍を組織した。滅亡したアカネイアを短期間で立て直して、逆にグルニアやマケドニア、ドルーアを滅ぼすまでの勢力にまとめ上げたのは間違いなくハーディンの手腕によるものだ。

 ハーディンの功績は言葉で表すほど簡単な事ではない。
 まず、ニーナの名というかアカネイア聖王家の威光はほぼ失われている。ただ聖王家の生き残りの下に集えと号令しても人は集まらない。ハーディン旗揚げの時点でニーナは負け組であり、最高級の賞金首でしかない。
 同盟軍に人を集めるためには
  ①勝ち馬であると思わせること
  ②味方すればメリットがあること
  ③正義の側であること

 以上3点を上手くアピールする必要があり、同盟軍はそれに成功した。例えば、ミネルバやロレンスを引き込んだのはその成果と言える。他にもマチスなどを引き込む説得のセリフかでは同盟軍の正義とドルーア陣営の悪を唱えている。
 だがこれら3点を最も効果的にアピールした方法は『マルスにファイアーエムブレムを授けた事』である。
 ニーナ=アルテミス、マルス=アンリ、ハーディン=カルタス伯、ドルーア戦争の奇跡という故事に自分たちを当て嵌め、勝てそうな気運を盛り上げた事もあるが、何よりも本来はアカネイア体制に対する反乱・解放だったはずの暗黒戦争をかつてのドルーア戦争同様に人間対竜族の聖戦にすり替え、自分たちを正義の側にした事が逆転勝利の決定的な要因となった。
 本来の戦争目的を見失い、悪の手先とレッテルを張られたグルニア・マケドニアの士気は著しく低下した。逆に英雄物語の再現で意気上がる同盟軍には義勇兵が多数馳せ参じた。暗黒戦争の趨勢は既に決していた。

【英雄戦争の種は蒔かれた…】
 暗黒戦争で鮮やかな大逆転劇を演出し、秩序を取り戻したハーディンの功績は大きい。しかし彼にも大きな誤算があった。
 第一に戦勝国アカネイアの中で、開戦時に犠牲を払った(ノア家、シャロン家、アリティア)と開戦時の犠牲が少なく勝ち馬に乗っかった(カルタス家、ラング家、ベント家、オレルアン)との間に深い対立が生まれた事。後者は歴史の敗者となり裏切り者の汚名を後世に残す事になる。
 第二にハーディンは聖王家の権威を高めることで国を治めようとしたが、アカネイアシステムは既に制度疲労を起こしていて立ち行かなくなっていた事。
 第三にドルーア打倒の象徴あるいはアンリの再来として祭り上げたはずのマルスの軍事的政治的才能が予測を大きく上回っていて、制御出来なくなっていた事。マルスは独自の動きでミネルバやロレンス、ウェンデル、ジョルジュなど国境を越えた人脈を作り上げていたし、同盟軍のドルーア打倒の戦争はいつの間にかマルスが主導権を握っていた。
 暗黒戦争は英雄戦争の始まりに過ぎなかった。

"FE考察~英雄たちの暗黒戦争" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント