FE考察~亡国の王子

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 今回はもう一人の勝者マルス視点での暗黒戦争を考察する。

【マルスの戦争目的】
 マルスの暗黒戦争での目的は何か?何のために戦っていたのか?
 それはドルーアに奪われたアリティアを取り戻す事に他ならない。

 父王を亡くし、タリスに亡命し力を蓄えたマルスは2年後に旗揚げし、同時期に旗揚げしていたニーナの下に馳せ参じた。そして炎の紋章を旗印に同盟軍の軍神としてグルニアとマケドニア、そしてドルーアの地竜王メディウスを滅ぼした。マルスはアンリの再来として称えられた。しかし、ここで一つ疑問がある。

 なぜマルスはこれほどの功績を上げながら、マルスが戦後手に入れたのはドルーアから取り戻したアリティアのみなのか?
 マルスはアリティアの王太子なので、何事も無ければいずれ父王コーネリアスからアリティアの王位を継ぐ身分である。そう、本来は黙ってても手に入るはずのものだった。不満は無いのか?貰える土地はいくらでもある。隣国のグルニアやグラ辺りが妥当と思えるが、グルニアはロレンス、後にラングが実権を得るし、グラはわざわざ隠し子のシ―マを探し出して後継者に据えている。マルス本人はどうあれ、多くの者は後のアカネイアへの反乱の原因と考えていたに違いない。

【マルスの手柄】
 別な考え方もある。
 まずマルスの功績はさほど評価されてはいないこと。同盟軍は多国籍の軍であり、マルスの功績もアカネイアやオレルアン、グルニアやマケドニアの寝返り組の助力あってのもの。マルスの指揮で勝利したとしても、その功績は実際に戦った将兵の所属先に分散されてしまう。マルスの功績と発言力が大きくなり過ぎて困るハーディンやアカネイア人はなんやかんや理由をつけてマルスの戦果を評価しなかったのではないか。マルスの方も手柄を上げ過ぎて敵を作らないように気を使う必要があった。同盟軍の中でマルスの地位は特別高くはない。
 それでもグラくらいは貰えても不思議の無い功績のはずだが…

 もう一つの考え方はアリティア返還はマルスの暗黒戦争勝利の報償として妥当かそれに近かったのではないか、ということ。マルスにとってアリティアは黙ってても手に入る(同盟軍がドルーア陣営を追い出すだけで自動的に手に入る)土地ではなく、暗黒戦争での功績があって、ようやく勝ち取れた土地だったのかもしれない。

【マルスのスタート地点】
 前回『英雄たちの暗黒戦争』では、アカネイアでウケの悪いハーディンとウケの良いマルスのスタート地点を比較したが、今回はマルスのスタート地点を別な視点から考察してみる。
 父王コーネリアスの遠征先で戦死の報を受け、マルスはいち早くタリスに亡命して難を逃れたが、残されたアリティアの臣民にとっては自分たちを見捨てて逃げ出した臆病者だったのではないか。そう考えるとマルスのスタート地点は思った以上に不利だったといえる。もちろんマルスの亡命は重臣のジェイガンやモロドフ、姉エリス、あるいはもしもの事態を想定した父王コーネリアスの意向で当時14歳のマルス自身に責任は無いかもしれないが、それでも裏切られたと思った人々は多かったと思われる。そしてコーネリアス王への評価も『アカネイアの戦争にしゃしゃり出て戦死し、本国を滅ぼした暗愚の王』へと転落した。

 元々アリティア王家は絶対的な君主というよりも独立性の強い地域豪族による連合政権の盟主という感じだったその盟主としての座も、かつて地竜王メディウスを倒した英雄アンリの血縁カリスマと宗主国アカネイアの承認による権威があってこそのもの。(参考:英雄アンリの影・後編)
 つまりタリスに亡命したマルスはアリティアの統治者としての資格を失っているということだ。マルスを後継者に定めた父コーネリアスは既に亡く、アンリの血縁カリスマの象徴たるファルシオンも奪われ、アリティア王家の後ろ盾であるアカネイアが滅びてしまった。そして何よりもアリティアの守護者としての役を果たせなかったことで、マルスがアリティアを取り戻すのは絶望的だったと言える。

 マルスはアリティアを取り戻す為には宗主国アカネイアの信任以上に、アリティアの臣民の信頼と名誉を取り戻さなくてはならなかった。マルスはゼロからではなくマイナスからのスタートを余儀なくされたのだ。

【交易立国アリティア】
 コーネリアス戦死の報を受けてすぐにタリスへの亡命したのは英断だったといえる。グルニア、ドルーア、グラ以前にアリティア国内の離反者からマルスを守らなければならなかったからだ。統治者としての資格を失ったマルスは最もおいしい賞金首だからだ。

 タリスを亡命先に出来したことから、アリティアのもう一つの顔が見えてくる。それはアリティアの海の交易立国としての顔だ。アリティアは国土の開拓による農地開発だけでなく、海洋交易の方面も開発して経済力を得たのではないか。それゆえに海路によるタリスへの亡命ルートは早くから用意出来たのだ。しかもドルーア陣営の目をかいくぐって遥か遠くのタリスまで送ってくれる、相当腕利きの海運業者との強いつながりが元からあったに違いない。
 後にワ―レン→ペラティ→ディールの海路を使ってグルニア軍を出し抜くのは草原育ちのハーディンには無く交易立国で育ったマルスにある発想で、やはりアリティアには古くからこの辺りの船乗りともつながりがあったと思われる。

【暗黒竜と光の剣】
 暗黒戦争勝利の後、マルスは暗黒戦争戦記戦記『ファイアーエムブレム~暗黒竜と光の剣』を発表し、国民に広めた。これは文章としてだけでなく、吟遊詩人によっても広められた。古代ローマ、ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』のような物を、『平家物語』のように広めたというイメージだろうか。
 マルスのアリティア統治者としての正統性を広くアピールするためのプロパガンダではあったが、勧善懲悪の英雄物語としても面白く、この“ファイアーエムブレム史観”は正史として人々の心の奥深くにまで刷り込まれることになった。

 余談だが、マルスは『ファイアーエムブレム~紋章の謎』を英雄戦争終結後に発表し、英雄戦争における正義と各国王族からの統治権の禅譲、マルスの価値観をアピールした。
 新・暗黒竜、新・紋章の方はずっと後の時代になってから後世の者が書いた書物だと思われる。“ノルダの市場”など後の時代に読む人の価値観に合わせた改変がされている。これはプロパガンダが目的ではなく、物語としても面白いマルスの戦記をより親しみやすくする目的だったのではないか。 

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