ドラクエⅡ考察~英雄・ローレシア王子の足跡④第2の旅立ち

画像
【突き付けられた現実】
 ルプガナに辿りついた王子たちは船を借りるべく町の有力者と会見をしたが、無下に断られてしまった。この時点で王子たちのハーゴン討伐の旅は行き詰まってしまった。

 よそものに船は貸せないという習わしは明らかに口実だろう。この老人の言葉からは交渉のテーブルにつく気すら無いようだ。王子たちを馬鹿にしている響きすら感じられる。
 王族の威光で船を徴発しようにもここは彼らの王国の勢力圏外なのだ。『何を無礼な!』と怒るわけにもいかない。余計なトラブルを起こして評判を悪くは出来ないからだ。そもそもローレシアとサマルトリアは遠過ぎる弱小国で、ムーンブルクは滅びてしまっている。王国の威光を保証する実力(軍事力)が無いのだ。
 ロトの血を引く王子たちと言っても客観的には小国あるいは亡国の王族に過ぎない自分たちの現実を初めて突き付けられた。

 ハーゴン討伐という大義があって、ローレシア、サマルトリア、ムーンブルク3国の王族が直々に頼めば船一隻くらいは借りられるだろうという彼らの見込みが甘すぎたのだ。
 ローレ王子はここで初めて挫折を味わった。自分自身の甘さを恥じたに違いない。

【ルプガナ人の視点】
 では視点を変えて、ルプガナ人の立場から見てみよう。

 老人から見た王子たちはまさに『世間知らずの坊ちゃんたち』である。
 王子たちは聡明な人物であり、旅の中で厳しい試練をいくつも乗り越えてきたし、地獄すら見てきた。しかしそんなこととは関係無くルプガナ人から見た王子たちは『世間知らずな坊ちゃん』なのだ。
 王子たちが子供だからそう見えるのか?それも関係無い。王子たちがたとえ経験豊富な大人に見えたとしても、ルプガナ人から見た王子たちは『世間知らずの坊ちゃん』なのだ。
 王子たちに限らずルプガナ人から見ればムーンブルクから陸路はるばる来たという時点で『世間知らずの坊ちゃん』あるいは『田舎者』だと馬鹿にしたくなる存在なのだ。

 そんな『世間知らずの坊ちゃん』に偉そうに王子だか王女だか名乗って船を貸せだなんて言われたら意地悪のひとつもしたくなるものである。

 ルプガナ人が知っていて、王子たちが知らない世間とは?
 それは海の世界である。


【ドラクエⅡ世界の対立軸】
画像 ドラクエⅡ世界には様々な対立軸がある。例えば王子たちとハーゴン、カミの教会とシドー教徒あたりが代表的なところか。他にもラダトームと竜王一族、ロト一族と竜王一族、ムーンブルクとサマルトリアの先住民、王権と教会、サマルトリア内の反王子派と親王子派、ハーゴン軍内での神官と悪魔族…、挙げて行くとたくさん出てくる。
 これまでの考察では大小様々な対立軸を元に見ることで、それぞれの立場にいる者の考えや行動の理解に近づけた。

 そして今までに取り上げなかったけれど、ドラクエⅡ世界ではトップクラスに重要な対立軸が『陸世界と海世界』の対立軸なのだ。

 陸世界の代表格はアレフガルド、ムーンブルクといった歴史の長い大国とそれにくっつくローレシア、サマルトリア。それにロンダルキアも陸世界の代表格と見て良いだろう。

 海世界の代表格はベラヌール、デルコンダル、ルプガナだろう。それに小規模ではあるがザハンは完全な海世界派だ。
 文化的にも外交的にも独自の色を出すテパは海と陸の中間といったところか。ぺルポイはよく分からない。海派かもしれないし、中間派かもしれないし陸派かもしれない。ぺルポイについてはいずれ再考察する予定。

 海世界の方が歴史は浅いが、ドラクエⅡの時代に繁栄しているのは明らかに海世界の方だ。海世界の人々は世界の国々の事を、伝統国だなんだと偉そうにしているけれど、狭い世界の小さな争いに明け暮れている時代遅れの連中だと見ているに違いない。
 実際、陸世界の代表格アレフガルドの凋落は著しい。狭い世界の小競り合いや活力の無さに嫌気がさして有能な人材が流出したのではないかと考えられる。
 ムーンブルクも海に対しては鎖国に近い。というか外の海の世界に出ようと考えても間にアレフガルドがあり、海世界の繁栄に乗っかるには極めて不利な位置にある。

 とにかくここで押さえておきたいのは、陸世界の国に生まれ、ロト伝説を聞いて育った王子たちには海世界というものが、想像するのも困難な環境にあったこと。それとコテコテの陸世界生まれ陸世界育ちの王子たちは、海世界に生きる人々にとって後進国の坊ちゃん嬢ちゃんだということである。

【ロトの勇者の不名誉】
 アレフガルドを出て、ルプガナに渡ったロトの勇者は以降の“自分の治める国を見つける”旅ではほとんど陸路を使っている。途中に大きな砂漠があり、困難なルートであるにも関わらずだ。
 なぜか?
 きっとアレフガルドからルプガナまでの生まれて初めての船旅が死ぬほど辛かったのだろう。二度と船に乗りたくないと思ったのかもしれない。後にサマルトリア地方に渡るときも船を使っていると思われるが、距離も短く、戦いがあれば気も紛れるだろう。
 ひょっとしたらルプガナ人の記憶に残るロトの勇者は情けない姿を晒していたのかもしれない。アレフガルドを平定した英雄と聞いてどんな豪の者かと期待してみれば、船嫌いの情けない男、それがルプガナ人にとってのロトの勇者なのかもしれない。
 そう考えると“あの”ロトの勇者の子孫だと誇らしげに名乗る若者が『船を貸せ』と言って来たのはルプガナ人にとっては笑い話以外の何物でもないわけだ。王子たちは間違いなく偉大なご先祖様の不名誉な失態は知らない。伝えられてはいないはずだ。

【不本意にして不謹慎な幸運】
画像 王子としての権威が通用せず、ロトの勇者の子孫であることが笑われるというカルチャーショックを受けた王子たちは船にも乗れず途方に暮れていた。
 しかし望外の幸運で事態は好転した。
 その幸運とはルプガナの有力者の孫娘がハーゴン軍の悪魔族に襲われている現場に出くわしたことである。
 そして彼らが出会ったのは悪魔族と言っても下っ端のグレムリン。倒せるレベルの敵だったのもまた幸運である。 こうしてグレムリンを倒した王子たちに恩義を感じたルプガナの有力者は一転、王子たちに船を貸すことにした。

 ルプガナが王子たちに船を貸したのは個人的な恩義からではない。ハーゴン軍の悪魔族グレムリンが町の中で市民を襲った事に危機感を覚えたからだ。
 それまではハーゴン軍とムーンブルクの争いは遠い陸の世界の小競り合いだと思っていたはずである。文字通り対岸の火事である。それゆえに王子たちが訴えるハーゴン討伐の大義にも関心が無かったのだ。

 ルプガナにグレムリンがいたことは本当に幸運だった。まずルプガナの有力者に恩を売ることが出来た。襲って来たのが悪魔族だったのも幸運だ。ハーゴン軍の脅威をルプガナと共有出来たからだ。他の魔物ではそうはいかない。そして倒せるレベルの悪魔族だったのも幸運だ。自分たちがやられては元も子も無いし、町でハーゴン軍の悪魔族を血祭りに上げることは『邪悪で強大なハーゴン軍に立ち向かうロトの血を引く王子たち』という存在をアピールする絶好のチャンスをモノに出来たわけだから。

 この事件でルプガナでの問題を全て片づけた上、望んだよりも遥かに大きな成果を上げた。しかしこの戦果をもたらしたのはあくまでもバカヅキと言っても良い位の幸運である。もしかしたらここで運を使い果たしたかもしれない程の幸運である。王子たちのハーゴン討伐の旅で初めて上げた大きな戦果だったが、『このままじゃダメだ。』と反省した苦い経験でもあった。
 まあ、幸運を最大限に生かした機転と、偶然の成果に溺れず反省した知性はやはり非凡ではあるが。

【ローレ王子が示した勇気】
画像 船を手に入れた後ではあるがローレ王子がルプガナでグレムリン討伐の他にもうひとつ果たした戦果がある。

 それは船の財宝の引き上げである。

 その場所はルプガナの北、新航路上である。
 ここで船が沈んでいるということは、新航路はやはり熟練の船乗りでも難しいルートなのだろう。

 そんな危険な海域でローレ王子は自ら海に潜り、財宝の引き上げに成功した。しかも本来海は素人の陸の王子様がだ。この行動でローレ王子はルプガナ人を始め、海の民に一目置かれる存在になった。沈没船の噂が遥か遠くデルコンダルにまで伝わる海の世界にローレ王子の勇名は確実に届いたはずだ。

 また危険な海域に素潜りしてまでして引き上げた財宝の取り分が山彦の笛ひとつというのはありえない。
 この財宝はきっと今後のハーゴン討伐の活動資金としてこの商人が管理するのだろう。

画像 グレムリン討伐と沈没船の財宝引き上げという2つの戦果によってローレ王子たちは心強いパトロンを得たのだ。
 
 陸の世界から海の世界へ、これが王子たちの第二の旅立ちだ。
 

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 9

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス

この記事へのコメント

togege
2011年08月27日 22:54
 ルプガナはロト一族にとっては苦い思い出の残る土地になってしまいましたね。
 久々登場のロトの勇者は思いの他カッコ悪い再登場になりました。
 ローレ王子は自身の失敗とご先祖の不名誉を乗り越え、海の世界にその名をとどろかせました。少しは英雄らしくなったでしょうか?

この記事へのトラックバック

  • エアマックス 95

    Excerpt: ドラクエⅡ考察~英雄・ローレシア王子の足跡④第2の旅立ち 考えるを楽しむ/ウェブリブログ Weblog: エアマックス 95 racked: 2013-07-09 13:06