FE考察~礎の竜騎士団

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 今回はミネルバが何故アカネイア側に寝返ったのかという話。
 
【グルニアの事情】
 前回『辺境の英雄たち』で述べたように一足先にオレルアンを落ち延びたミネルバと竜騎士団はレフカンディで足止めをくらって、同盟軍に追いつかれ、同盟軍との交戦を余儀なくされた。
 ミネルバたちは同盟国であるはずのグルニア領レフカンディ、それにディールを素通りさせてもらえなかった。しかもハーマイン、ジューコフ両将軍はここぞとばかりに人質マリアのカードを見せつけて、高圧的な態度でミネルバと竜騎士団を戦わせた。

 何故だろう?
 両者に共通しているのは同盟軍を迎え撃つには戦力不足なこと。グルニア軍は現地で徴用した民兵などは使わず、本国から連れて来た騎士や兵士のみで戦うが、レフカンディ城やディール要塞を守るには絶対的に人手が足りなかった。グルニア軍は精鋭だが、そのプライドの高さが災いしたということだろうか。それとも同盟軍と戦う頃にはグルニアは聖王国アカネイアに楯突く賊軍として民の支持を失い、兵員を徴用出来なくなっていたのか。
 戦力不足のハーマイン、ジューコフ両将軍にとっては卑劣と罵られても使える戦力は使いたいというのが本音だったに違いない。

 グルニア軍の戦力不足はレフカンディやディールだけでなく、ワ―レンやメニディも同様である。グルニアは戦力不足ゆえに各地で各個撃破されてしまった。では何故グルニアは軍を占領地から撤退させ、集結させなかったのだろうか?
 いや、集結したくても出来なかったというのが実態ではないだろうか。

 実力主義で覇気のあるグルニア諸侯は打倒アカネイアを果たすまでは団結したが、その後はアカネイア領を奪い合うライバル同士になった。(参考:グルニア王の苦悩・後編)
 グルニア王国がアカネイア領を支配しているというよりは、レフカンディのハーマイン、ディールのジューコフ、メニディのギガッシュなどといった具合に諸侯がそれぞれの地で独立国の王のように君臨しているのが実態だったのではないか。彼らは自分の占領地の統治で手一杯で援軍を出す事も出来なかったし、せっかく手に入れた広大で豊かな領土を手放して狭いグルニア本国に撤退するなど無理な話であった。

【竜騎士団の末路】
 SFC版『紋章の謎』では敵のDナイトは一律“竜騎士団”、Pナイトは“天馬騎士団”と表記されているが、『(新)暗黒竜と光の剣』では兵種に関係無く“竜騎士団”あるいは“グルニア兵”と表記されている。
 出現場所によって違うようだ。
 “竜騎士団”レフカンディ、グラ、カダインのD(P)ナイトである。
 “グルニア兵”と表記されているのはディール要塞、ノルダ、アリティアの戦いである。
 おそらく指揮系統の違いだろう。マリアを人質に取られた上、レフカンディでの裏切りの負い目からミネルバや竜騎士団は完全にグルニア軍の指揮下に入ってしまったらしい。
 ドルーア連合の中でも立場が悪くなったマケドニアは各地に“竜騎士団”を派遣することを拒否出来なくなってしまった。

【ミネルバの事情】
 弱みにつけ込んで無理難題をふっかけてくるグルニア領など通らなければ良かったのにと思うが、それが出来ない事情があった。それはアリティア軍に港町ガルダへのルートを制圧されてしまったことだ。ガルダからの海路こそがマケドニア本国との間の本来の移動・補給ルートだったのではないか。ここを塞がれたために、ここぞとばかりに弱みにつけこまれると分かっていても、グルニアに頼らざるを得なかったのである。
 アリティア軍もガルダやサムスーフを制圧出来るほどの兵力は無かったが、賊を退治し、地元の有力者を上手く味方につけたようだ。

 ではマケドニアは何故この重要な港町ガルダを竜騎士団を使ってでも守らなかったのか?
 やはりハーディンの巧みなゲリラ戦でオレルアン城にくぎ付けされたからだろう。それにガルダとの間のサムスーフ山地は無政府状態になっていて通行が困難だったというのもあるだろう。

 前回の考察を覆す説にはなるが、もしかするとガルダに駐留するマケドニア軍は海賊に敗れてしまったのかもしれない。生き残りのマケドニア騎兵は海賊の使い走りに成り下がったと…

【マケドニアの事情】
 今度はマケドニア本国の視点だが、ミネルバの離反は織り込み済みだったのではないか。ドルーアとアカネイアのどちらが勝ってもマケドニア王家は生き残るからだ。血を分けた兄と妹が殺し合うという悲劇的な話ではあるが、歴史上そのような例はいくらである。
 ミシェイル王子がその野心ゆえに暴走して父王をもその手にかけたという物語はミネルバがアカネイア側に寝返ったからこそ生まれたフィクションなのかもしれない。

【ハーディンの事情】
 ではミネルバは何故オレルアンの時点でアカネイアに投降しなかったのか?グルニア領に逃げたために貴重な竜騎士を何人も失うはめになったし、マケドニアの立場は悪くなった。

 同盟軍の実質的な盟主ハーディンも本音ではミネルバの寝返りを望んでいたのではないか。戦後を考えると、マケドニアを治める者は必要だからだ。実際、暗黒戦争終結後のマケドニアはそのままミネルバに任せている。実はハーディンの戦後処理は敵対国に対して手ぬるいと批判が出そうなくらい寛容だ。
 しかしハーディンはオレルアンとアカネイアを代表する者として、その本音を表に出すわけにはいかなかった。マケドニアはオレルアンからもアカネイアからも恨まれ過ぎているからだ。
 ハーディンだけでなく、アカネイアの者たちも本音ではミネルバを許すのは理に適っていると思ってはいても、立場上それを表に出すわけにはいかない。マケドニアは多くのアカネイア人ばかりか王家の者まで殺した憎き仇なのだから。そこで重要な役を得たのがマケドニアとは直接の仇敵関係ではないアリティアのマルスであった。これらの事情を考えれば、和平の使者カチュアがマルスに接近するのも、和平交渉をマルスが担うのも当然の流れである。

【礎の竜騎士】
 とはいえ、ミネルバがアカネイアとオレルアンに恨まれているという状況はどうするのか。ミネルバはグルニアに妹マリアが人質にされている事を逆に利用した。
 ミネルバがアカネイア側に寝返るために『ミネルバら竜騎士団は妹マリアを人質にされて無理矢理戦わされている』という物語を仕立て上げた。もちろん口先だけでは信用されないので、レフカンディやディールでは竜騎士団を捨て駒にされて見せる必要があった。どちらも地上軍の援護も無く無謀な特攻をさせられているのだから、捨て駒扱いなのは明らかだ。そこで今まで散々苦しめられた竜騎士を落としまくってアカネイア・オレルアンの留飲も少しは下がっただろう。

 こうしてミネルバは多くの騎士の犠牲の上にマケドニア王家生き残りの希望をつなげた。それをより確実なものにするために『マリアを人質にされて無理矢理戦わせられている。』物語に加え、『野心に狂ったミシェイルに無理矢理戦わされている』という物語も広めた。これは先に寝返ったマチスも同じことを言っていたので信憑性をもって受け入れられた。
 ディール以後、ハーディン・マルスの同盟軍は『悪の帝国ドルーアの手先として無理矢理戦わされている国を解放する。』という大義名分も手に入れて、より勢力を増大させた。

 ミネルバの寝返りはアカネイアとマケドニア双方にとってメリットのある落とし所だったが、恨みという感情を乗り越えるのは簡単ではなかった。竜騎士たちは不毛な戦争を終わらせるための礎となったのだ。

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この記事へのコメント

togege
2014年03月09日 22:52
ミネルバの評価はFE考察を書き始めた頃から結構変わりつつあります。ものの見方を変えると評価も変わるというところでしょうか。
よくよく考えるとミネルバ離反も結構妥当な落とし所だったんだなと、こんな政治劇をFCで表現した初代は偉大だとも思います。
cvhiryuu
2014年03月10日 13:02
今回も楽しく拝読させて頂きました。

確かにハーディンにとって直接オルレアンを攻めたマケドニア問題はマルスにとってのグラ問題以上に頭が痛い話であったと思います。「グラの始末はハーディンが行うから、マケドニアの問題をマルスが助けてやってくれ」というのはハーディン、マルスにとって相利共生の良い落とし所であったと思います。

親子兄弟姉妹で敵味方に分かれて勝ち残った方が領民の面倒を見る、という戦略は強国に挟まれた弱小国では確かに有効です。
ただし、マケドニアの例をそのまま当て嵌めて良いか、と考えると少々疑問が生じます。
第一に戦後のマケドニアの政情があまりに混乱している点が挙げられます。
リスク分散の為に兄妹が敵味方に分かれたとすると、当然ミシェイル敗北時の処理も考えている必要があります。しかし、ミネルバの行政は急激な軍縮とそれに伴う治安崩壊という最悪の惨事を招いています。公的には死人になっていたミシェイルが出馬して辛うじて一族全滅だけは避けられましたが、戦後処理の打ち合わせが出来ていたにしてはあまりに拙劣です。
cvhiryuu
2014年03月10日 13:03
 第二にミネルバに合流した戦力が余りに少ない点が挙げられます。
 ミネルバ離反が戦略的なものであるならば、集まった兵力が多いほど同盟軍内の彼女の発言力も戦後の地位も有利になる筈です。
飛行出来る伝令を有するマケドニア軍はアカネイア大陸でも傑出した通信能力を有している軍隊です。強制的に分散させられた、若しくは物資の集積状況から集結出来なかったにしても、その通信能力を生かせばそこそこの数が集まってきそうなものですが、やって来たのはパオラとカチュアの二人だけ。
ミネルバ自身もマリアとパオラ達親衛隊以外はどうなっても構わないという態度をとっています。発言力の担保(議席)になるマケドニア兵を投降させないで殺して如何するのだ!!と突っ込みたくなるのは私の気のせいでしょうか・・・。それとも他のマケドニア兵がストライキを起こすほど遠征軍内の人望が凋落していたか・・・(まあ突撃命令だけ出して敵前逃亡する指揮官に怒る気も分かりますが)。
 以上の点を考えるとミネルバはリスク分散の戦略を理解していなかったと私は考えます。恐らくはミシェイルがミネルバに対して看板以上の能力を期待していなかった点と、マルスの進撃とタリス軍の制海権奪回で予想以上に早く本国との連絡路が途絶され、戦略の切り替えと人材の配置転換が間に合わなかった点、マリオネス亡き後の遠征軍内に国家戦略の視点を持った幹部が居なかった(若しくはレフカンディ以前に死亡した)点が重なった結果でしょう。
 国家として反アカネイア連合軍と同盟軍の二股掛けは考えていたかもしれませんが、現場が今一理解していなかったというのが私の結論です。
togege
2014年03月10日 20:50
>cvhiryuuさん
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りミネルバ離反の動きは戦略的に行われたというには準備もコンセンサスも出来ているとは言えずお粗末なものです。そうなるのは当然で、つい最近までマケドニアがやっていたのは残党狩りであって、突然マケドニア王家の存続の危機が来るなど全くの想定外でした。なのでミネルバ離反の計略は突然の窮地でパニックに陥った末の苦し紛れなのかもしれません。グルニアが竜騎士を捨て駒に使うのも苦し紛れです。
大逆転のターニングポイントはマルスの蜂起とガルダ制圧で、たったこれだけで残党狩りをしていたはずのマケドニアとグルニアが一気に窮地に陥ってしまいました。ガザックは寝た子を起こしてしまったのです。
togege
2014年03月10日 21:09
(続き)
白騎士団以外に同盟軍に寝返る竜騎士がいなかったのは、元々マケドニアの戦争目的がアカネイアへの隷属からの解放だったので、マケドニア存続のためとはいえ再びアカネイアに降るのは我慢出来なかったからではないでしょうか。実際ミシェイルの野望に殉じた騎士が多数いたこともあり、憎き敵に降るくらいなら死を選ぶのが誇り高き竜騎士メンタリティだと考えます。ミネルバは同じ竜騎士として彼らの意志を尊重したのでしょう。
マケドニアを守る為、同胞の屍を乗り越えて生き抜くひどく苦しい道を選んだミネルバというのは、これまでと違った魅力を感じます。その道を示したのはマリオネスとか…
後にミネルバはさらなる悲劇にさらされます。それについては、英雄戦争編の考察で…。カギを握るのはリュッケとマチスです。
togege
2014年03月11日 21:30
レナはガルダからデビルマウンテンに向かっているんですよね。これもマケドニア本国とはガルダ経由の海路だという根拠の一つに“ならなくもない”と今更気づきました。
レナの目的が兄マチスに会う事だったら、マケドニア~ガルダ~サムスーフ~オレルアンのルートは確定だったんですが、レナはマチスが軍隊に入ってる事すら知らない様子でした。会うこと自体が久し振りな可能性が高いです。
レナは謎の人物です…
あらた
2014年03月12日 19:59
今回もお疲れ様です。

取りあえず自分が前回の考察含めて感じた事ですが…


①マケドニア軍

マケドニア遠征軍にとってハーディンのゲリラ攻撃がきつかった最大の要素はガルダ港からオレルアン城までの補給線を不安定な状態にされた事なんでしょうね。

ガルダ港に竜騎士団を送れなかったのはサムスーフ山地はともかく草原だと空を飛んでいる竜騎士や天馬騎士は動きが察知されやすかった事とオレルアンにおけるハーディン人気と反マケドニア感情を考えると民兵の反乱を危惧して容易に城から動かせなかった事あたりでしょうか。(民兵に関しては実は強制徴募があったにせよ草原地帯の住民はそこまでマケドニアへの加担に積極的ではなく、サムスーフ山地やガルダ近辺出身の民兵が主力だった可能性やまた出自不明の流れ者も傭兵として多く採用してたと思います)


②ガルダ港

第一部二章のマップ冒頭解説ではガルダ港は元々は貧しい港町だったのが海賊に占拠されたとの記述になっていますが、占拠の段階で補給線を築きたいマケドニア軍、恐らくはマリオネスらマケドニア遠征軍の幹部らが裏で手を引いていた可能性は高いと思いました。

騎兵隊はやはりマケドニア軍が派遣した監視役であり本国やオレルアン城の遠征軍との連絡や輸送を担っていたのだと思います。ただ、海賊達は実は現地出身ではなくマケドニア・バイキングを雇ってガルダ港を占拠させた線も考えられます。第二部にてマケドニア・バイキングの本拠地であるホルム海岸にカシムがいたのは実はその繋がりだったのでは。
あらた
2014年03月12日 20:00
③ミネルバと竜騎士

ミネルバの事情を知る人物がどれだけいたかは定かではありませんが誇り高い竜騎士が多い故にリュッケら生き残りの竜騎士にとってはミネルバの行動は納得しきれないものだったんでしょうね。ミシェイル曰く気の弱いリュッケが反乱を起こしたのはリュッケ自身が事情を理解しても部下の突き上げに抗しきれなかったんだと思います。

④レナの謎

よく考えると結構重要な人物なんですよね。選択肢次第ではマケドニア王妃になっていた存在で、ミシェイルがレナをどう思っていたかは不明ですが、結婚によって何らかのメリットがあったはずです。(グルニア育ちで祖父(母方?)がグルニアにいる事を考えればグルニア関連でしょうか)
またミネルバ政権時代にはどのぐらいの地位か解りませんがマケドニア修道院の司祭になっており、ED含めてミネルバともかなり繋がりのある人物でもあります。オレルアンに向かったのは実は何らかの目的でミネルバ或いはマリアと会う為だったとではと自分は考察しました。

togege
2014年03月12日 20:21
>あらたさん
コメントありがとうございます。
ガルダ港にいるのはマケドニア出身のバイキング出身…、なるほど、目からウロコです。
竜騎士を見殺しにしにして同盟軍に降ったミネルバの立場を理解した者は暗黒戦争時に本国にいた中にはまずいなかったでしょうし、遠征軍の中ではその評価は極端に二分されていたと考えられます。それ以前に遠征軍の生き残りが少ないでしょうし…
遠征軍~同盟軍~リュッケの反乱軍~アリティア軍、と華麗な転身を繰り返して生き延びたマチスは「機を見るに敏」な男と言えます。
cvhiryuu
2014年03月12日 21:02
 あらた氏の考察も読ませて頂きました。

 確かに、ガルダの海賊は劇中でガルダの顔役やタリス人に「余所者」扱いされていますから、マケドニア・バイキングの一派が主力であったと云う意見は一理あると思います。

 第二部序盤に出てくるリュッケやルーメルですが、敗戦国にも関わらず、精鋭部隊である彼等が温存されていたのは、対ドルーアの抑え部隊の役割をミシェイルに厳命されていた故、という可能性はあり得ないでしょうか。

 ミシェイル、ミネルバどちらが勝っても、戦力の温存とドルーアからの奇襲阻止を両立出来ますから、あの時点ではベストの戦略であると思います。リュッケも良く言えば律儀、悪く言えば小心な性格ですから、主家の兄妹同士の殺し合いに加担するよりは此方が性に合っていたと思います。

 戦後に彼等の貢献が理解されず、軍縮→治安崩壊→不平分子増加→全国的な反乱、と見事に裏目に出ている当たり、ミシェイルらしい結末ですが・・・。
togege
2014年03月12日 21:20
>cvhiryuuさん
ミシェイルが対ドルーアへの抑え、戦後の担い手などの理由で精鋭を温存した可能性はかなり高いですね。
ドルーアとの戦力差やリュッケ、ルーメルについての考察はもう少し練り込んでから発表します。

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