ドラクエⅡ考察~ハーゴンと月の王国

 今回はハーゴンとムーンブルクの関係について考察する。
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【大神官という役職
 冒頭のローレシア城でのこのシーン、注目すべきは傷ついたムーンブルク兵が”大神官”ハーゴンと呼んでいることである。ハーゴンと呼び捨てにせず、わざわざ大神官という偉そうな肩書きをつけて呼んでいる。魔物の軍団を率いて祖国を滅ぼした憎き仇敵なのにだ。
 ちなみに彼以外にハーゴンをどう呼んでいるか調べたところ、“ハーゴン”と呼び捨てにする者はリリザの兵士と女性、ムーンブルクの魂、ラダトーム王の側近の兵士、竜王の曾孫、大灯台の兵士、ペルポイの神父、いずれも反ハーゴンサイドに属する者たちだ。
 ハーゴン“さま”と呼ぶのはローレシアの牢に囚われている神官で当然ではある。また”大神官”ハーゴンと呼ぶ者はペルポイにもいたが、牢の中にいて台詞からも親ハーゴンサイドに属する者と思われる。
 あと、リメイク版OPではムーンブルク王は敵らしく二度呼び捨てにしているが、伝令のムーンブルク兵は”大神官ハーゴン”と呼んでいる。

 冒頭のムーンブルク兵は当然反ハーゴンサイドの者であるにも関わらず“大神官ハーゴン”と呼んでいるのは何故か?という話になる。

 そもそも神官とは国家の官吏として、何かの神に仕える、または神を祀る施設に奉職する者のことである。大神官ハーゴンは神殿に使える官吏の長ということになる。
 そしてムーンブルク兵がハーゴンを“大神官”と呼ぶということは、

 ハーゴンはムーンブルク王国公認の大神官という役職に就いているということだ。

【ハーゴンの出自】
 ムーンブルク社会は世襲の王が治める血統社会。その中での大神官ハーゴンは跡を継ぐ見込みの無い王族か貴族の子弟がその出自ではないかと推測される。現実世界の歴史上でも、跡を継ぐ見込みの無い者は僧籍に入れるケースが多かった。王族貴族としては養うコストの削減にもなり、宗教権威を味方に取り込むメリットがあり、受け入れる側も世俗からの便宜を引き出せるメリットがあった。

【ムーンブルクの神々】
 ムーンブルク王国において、破壊神シドーへの信仰は公認されており、ハーゴンは大神官というおそらくは高い地位に就いていた。これはさほど不自然でもない。月の欠片を奉納している満月の塔のあるテパ→月の欠片で海底の礼拝堂への入り口が開放される→礼拝堂に祀られた邪神の像でロンダルキアの神殿への道が開かれる…ハーゴンの教団にとって月とは重要な信仰のシンボルであり、その月=ムーンの名を冠した王国とのつながりが弱いわけはないのである。(参考:在りし日のムーンブルク

 ムーンブルクがシドーを崇める国だったのかと言えば違和感はある。ムーンブルク王と王女、死んだムーンブルク兵、ムーンペタの民たちの価値観はハーゴンのそれと共通しているようには見えない。
 おそらくムーンブルクは多くの神が信じられる国だったと推測される。ドラクエ2世界には様々な神が崇められている。代表的なのが破壊神シドー、教会の神、大地の精霊ルビス。他にはエンディングの謎の”美しい声”が言うところの“すべての命を司る神”の力で王子たちは全回復かつ生き返る。海底洞窟の地獄の使いたちの『悪霊の神々に捧げる生贄にしてやろう』という台詞から崇める神は複数存在している。それにラダトームの“光あれ”の老人もⅠの時には『おお神よ』と言っている。これらの神々の中には同一の存在もいるかもしれないが、確実に言えるのはドラクエⅡ世界には多数の神が存在していて、人々もそれを受け入れている事だ。
 在りし日のムーンブルクには様々な神の神殿が建ち並んでいたのではないか。破壊の神シドーもムーンブルク社会の中では神々の中の一人として受け入れられる存在だったのかもしれない。数多の神々の一人に過ぎないとはいえ、“月”との関係があり、破壊(とその後の再生、裁きもか?)を司るシドー教はそれなりに力のある宗派だったのではないか。

 しかしハーゴンは価値の序列を厳密に白黒つけねば気が済まぬ男。様々な神が混在するこの世界に大きな不満を持っていたのだろう。数多の神々の序列を彼の基準で決めた結果、破壊の神シドーを頂点とした厳格な世界観を構築していったのではないか。(参考:ハーゴンの世界
 そして非寛容で厳格なハーゴンはこの汚れた世界の破壊を企てた。

 次回は『ハーゴンと破壊の神』

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この記事へのコメント

togege
2014年06月06日 23:04
前回「ハーゴンの世界」と今回「ハーゴンと月の王国」次回「ハーゴンと破壊の神」はワンセットで考えています。
多神教的な世界を破壊して自分の理想とする一神教的な世界を創造するという、ハーゴンの目的が見えてきました。
PRS
2014年06月08日 11:27
確かに、ハーゴンが大神官であるということは、ハーゴンに敵対する人々も認めていることではあるんですね。
人柄や主義はさておき、その実力はずば抜けていたということの現れと考えて良いのかなと思われました。

八百万の神という概念を許容する姿勢は、ドラゴンクエストの世界は中世風のイメージのようで、実は日本の思想も根底にあるのかもしれませんね。

紋章の謎のご考察も再読させていただきました。
そこで、ルビスの護りはシドーを制御するために必要であり、王子たちが精霊ルビスの護りを敢えて入手させているのではないかとありました。
神殿に幻の結界を張っているのも、護りを持たぬものには用はない、ということでしょうかね。
ハーゴンの呪術(知恵)、シドーの力、ルビスの心?愛情?、が3すくみになっているようなイメージが湧いております。

今までのご考察がまとまり、いよいよひとつの核心に近づいておられるようで、次回も楽しみにさせていただきます。
togege
2014年06月08日 13:01
>PRSさん
コメントありがとうございます。
ハーゴンについては着地点が見えて来ましたね。
ドラクエにしろFEにしろ和製ファンタジーなので、その根底に流れるのはやはり日本人のメンタリティなんですよね。

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