FE考察~聖王国奪還

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 今回はニーナの同盟軍がアカネイアを奪還するあたりの情勢について考察する。

【アカネイアの貴族たち】
 開発者による裏設定『Designer's Note #1』によると、聖王国アカネイアには有力貴族が存在するという。
  ディール候シャロン(ミディア)・レフカンディ候カルタス・アドリア候ラング・メニディ候ノア(ジョルジュ)・サムスーフ候ベントと呼ばれ、これらの有力貴族は王家に従属しながらも独立した兵力を擁し、他の王国に匹敵する程の勢力を誇っていました。
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・ディール侯シャロン(ミディア)、メニディ侯ノア(ジョルジュ)
 アカネイアの中では名門で王家に対する忠義の篤い所謂王党派で、ドルーアとの戦いで王家を守るべく戦い、滅亡した。生き残りのミディアやジョルジュはお家再興の為に奮戦し、その忠義と功績により至宝メリクル(パルティア)を与えられる。それでも領土は戦禍により荒廃し、人材や財産の多くは失われ、その勢力の衰えは著しい。外からしゃしゃり出てきて美味しい所を掠め取ったハーディンには反感を持っている。ミディアは後に反ハーディンのクーデターの首謀者になる。ジョルジュは暗黒戦争以後、アリティアのマルスに接近し、彼の反乱に加わる。

・サムスーフ侯ベント
 ゲーム中には一切登場しない謎の人物。アカネイアを裏切ってドルーアに寝返ったらしい。領土はデビルマウンテンの辺りで、当時のアリティア軍がオレルアンに行くのにわざわざ道も悪く盗賊の巣窟でもあるデビルマウンテンを通ったのは、歯が立たない敵対勢力との衝突を避けるためだと思われる。統治者であるベント家に野放しにされていた盗賊団を退治したアリティア軍の評判はここで大きく上がった。
 後にラングのようにアカネイアに復帰したか、あるいは滅ぼされたかは不明。

・アドリア侯爵ラング
 暗黒戦争ではベント家同様にドルーアに寝返ったとされ、グルニアでの圧政でも有名な悪名高き男ラングである。領土はパレスとオレルアンの間にある山岳地帯で、アリティア軍とオレルアン狼騎士団が戦った辺りにある。
 アリティア軍と合流したニーナの同盟軍が最短距離でパレスに向かわずにレフカンディ方面に回り込んだのは、その時点では勝てない敵だったのもあるだろう。
 裏切り者のはずのラングが戦後重用された理由については後述。

・レフカンディ侯カルタス
 アルテミスと結婚したカルタス王(ややこしい…)や、オレルアンの初代国王マーロンを輩出した名門中の名門である。他よりも平地が多く豊かな土地に見えるし、領土内かどうか定かではないが貿易港ワーレンが近いので交易による恩恵もあるだろう。
 ドルーアとの戦争では“お家騒動の混乱から兵を動かせず”との事だったが、日和見だった可能性も否めない。グルニア軍に占領されているところを見ると、揃わぬ足並みに付け込まれて滅ぼされたか、滅ぼされないまでも領地の召し上げや移動はあったと思われる。

【王土解放】
 ハーディンはアカネイアの中で真っ先にレフカンディを狙った。
 グルニア軍はこの地を占領するには明らかに人手不足(急ごしらえで竜騎士団を使う所にも表れている)で付け入る隙があったからだ。現地民衆は行き届かぬグルニア軍の統治には大きな不満もあっただろう。そこへ生きていたニーナが現れれば、ここでの勝利は決まったもの。ハーディンが旧統治者カルタス家の遠縁に当たることも有利に働いたかもしれない。ハーディンとニーナはまずアカネイアで最も豊かなこの土地を真っ先に掌握した。

 王家の姫君として育てられたに過ぎないニーナは権威はあっても、聖王家としての権力や財力を使いこなす力量は無かった。そのままパレスに戻ったとしても守旧派の有力貴族の傀儡にされるか、最悪乗っ取られるしかなかった。ハーディンはそのような輩からニーナを守りたかったが、オレルアン王弟に過ぎないハーディンは当然ながらアカネイア国内に権力基盤を持たなかった。(参考:暗黒皇帝の真実)
 そんなハーディンが後に皇帝として絶対的な権力を得たのはニーナからの全面的な権力移譲がその要因だったが、それ以前にハーディンとニーナが発言力を得るための“アカネイア国内での具体的な力”が必要だった。彼らはその力をレフカンディおよびワーレンから得ていたのではないかと考えられる。
 ハーディン自身の武功とニーナの絶対的な支持に加えレフカンディおよびワーレンの財力があれば、ハーディンの発言力は戦乱で弱体化した他のアカネイア貴族を圧倒出来たのではないか。

 ではカルタス家はどうなったのか?既にドルーアに滅ぼされたか、そうでなければお家騒動に乗じて“遠縁の”ハーディンに乗っ取られたといったところだろう。最終的にハーディン皇帝が取り潰した可能性も高い。ハーディンにとってカルタス家は主家に当たるが、打破すべき守旧派であり目の上のたんこぶでもあった。

 またペラティ王国を滅ぼし、この辺りの海路も制圧した。旧統治者のカルタス家に黙認されていたペラティの海賊行為が無くなったことで、この地の絶対的な支持を得たと思われる。

 ハーディンが短期間でこの地域を掌握し、自らの権力の源にするには現地民衆の絶対的な支持が必要である。そのために民衆が旧統治者(カルタス家、グルニア軍)に抱いていた不満の解消を徹底的に行った。民衆と直に触れ合って心を掴むのはハーディンの得意とするところだった。(参考:ハーディンの理想)

【ラングの功績】
 裏切り者ラングが戦後に重用されたのは何故か?
①ハーディンにとって使い易かった。
 裏切り者として、滅ぼされてもおかしくないほどの負い目がある以上、ハーディンの命令には絶対従い、無理も出来る駒だったというのが一般的な見方だろう。実際ゲーム中ではハーディンの走狗として汚れ役も厭わなかった。

②暗黒戦争勝利の重要な功績があった。
 いくらハーディンにとって、こき使える駒でも、家族を殺されたニーナにとっては裏切り者は許し難いだろう。そんな人物を重用する事にニーナが不満を感じるのはごく自然なことだ。
 だが、パレスとオレルアンの間にあるアドリアを治めるラングがニーナの亡命に際し便宜を図ったと考えればニーナにとってはカミュ並の恩人なのではないか。

 この時点でドルーア側に寝返っていたラングがニーナの亡命を助けるというエピソードは後のマルス王朝により闇に葬られるべきものだが、『アカネイア戦記』でのミネルバやカミュの活躍よりはずっと信憑性が高いと思うがどうだろうか?
 ドルーアに寝返りながらニーナの亡命も助けるという、高度な政治工作をやってのけたラングは大陸一の狸親爺と言えるのではないか。

 またラングが再びアカネイアに寝返った時期は暗黒戦争の趨勢が決したパレス奪還の前後と考えられるが、ここでニーナのいる同盟軍本体が南からパレスに攻め込むと同時に北から挟み撃ちにしたのだとしたら、かなり効果的かつ決定的な攻撃になる。ラングがドルーアからの信頼を得ていたのなら尚更だ。
 ドルーアから見てラングの離反の可能性はかなり低かった。なぜならアカネイアを裏切り憎まれているラングがアカネイアに復帰出来る見込みは薄かったからだ。だからこそ再度の裏切りは効果的に働いた。戦後の彼の評判の悪さは有名すぎる。

 この南北からの挟み撃ち作戦はハーディンとの間で極秘かつ入念に計画されたものだろう。当然マルスにも知らされなかったので、マルス視点の物語であるファイアーエムブレムとは解釈が異なる。

 ラングは戦後も裏切り者として人々からは軽蔑の眼差しを向けられ、名誉とは程遠い汚れ役を押し付けなくてはいけなかった。聖王家を残すために、あえて裏切り者として生きる道を選んだとしたならばラングこそ真の忠義の臣なのではないか。…という見方も出来なくはない。

【新たな聖王国のために】
 ニーナ&ハーディンの新たな聖王国建設はハーディン王の即位からではなく、オレルアンからレフカンディに進撃した時点で始まっていたといえる。当然そのための計画や準備はオレルアンにいた時から練られていた。マケドニア軍をゲリラ戦法で翻弄し、反攻の機が熟すのを待ちながら、密かにラングと連絡を取り合っていたのだろう。
 レフカンディとワーレンを掌握する際、ハーディンは有能な現地人を身分ではなく実力本位で抜擢をしたのだろう。これはハーディンの得意なやり方でもあり、短期間で大きな成果を上げた。ここで得た富は後に皇帝としての独裁政権を支えることになる。

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この記事へのコメント

togege
2014年08月20日 23:23
長らくお待たせしました。
ゲーム中に出て来ないアカネイア貴族なんか書いてもウケそうにないので、どうしたら面白くなるか苦労しました。
ハーディンは王位についてから僅か2年で絶対的な独裁者になったとされていますが、その準備期間や権力基盤はどこにあるのか、書かなきゃなと思いました。ハーディン政権はニーナ亡命から始まっていたのです。
今回株を上げたラングの今後の活躍や詳しい人物像については、まだイメージ出来ていませんが、きっと英雄戦争編で勝手に動いてくれるでしょう(笑)
ハーディンが最初から皇帝になるつもりで、ニーナ以外の聖王家滅亡に関わったのではという疑惑については、「完全にシロ」だと考えています。もしその疑いがあればマルスがそれを突かないわけがないでしょうから。
cvhiryuu
2014年08月24日 00:06
今回も楽しく拝読させて頂きました。

確かに一度寝返ったのに本領安堵、というのは凄い離れ業です。余程大きな恩をニーナに売っていたか、決定的なタイミングでドルーア側を妨害した、若しくは降伏も止むを得ないと殆どの人間が納得する理由(+下手に刺激すると危険と思わせる予備戦力)が必要です。領土が戦乱のど真ん中に放り出されて消耗していた筈のラングが、本領の主力が無事だった関ヶ原の島津家並みの「本領安堵」を勝ち取ったのは途轍もない大成果です。

ラングはグルニアでの圧政から完全な悪役扱いですが、彼の立場に立ってみると多少気の毒な面も見えてきます。

アカネイア直轄領や改易、断絶した貴族の領地はハーディンが抑え、制海権はアリティア=タリスが取っています。経済利権はハーディン、マルス、タリス王の3人で分け取りにしているのです。

自領民から搾取するのは後々恨まれる(グラのジオルが良い例です)ので下策として、他の領主や国主が自領の再建の為に取る道は…
cvhiryuu
2014年08月24日 00:07
(続き)
倹約策はミネルバが壮絶な大失敗をしたように、無理な話です。インフラの再整備にはどうしてもお金がかかりますし、警備兵力も必要です。

早期にドルーアに降伏した為に、守旧派の仲間にも入れず、領土は戦乱で荒れ放題。ラングとしてはハーディンの忠実な走狗になる以外に領土の復興は不可能だったでしょう。

また、それまでアカネイアで威張り散らしていたグルニア人に対する配下の反感も無視出来ません。ラングが善良な人物だったとしても、アカネイア人進駐軍とグルニア人双方が戦死者遺族を抱えている状況では一触即発の危険を孕んでいますし、ラング自身の資金力が危うい状況では税金の取り立てが厳しくなるのは必然だったと思います。

ハーディンがグラ国主に父と喧嘩別れをしていたシーマを引っ張り出し、マルスも当初はそれを歓迎していたのも、アリティアがあのタイミングでグラを併合、若しくは信託統治領化してもいつトラブルが起こるか分からない、という一面が強いと思います。それならば、海から得られる利益をアリティアの復興に集中して、元々仲が悪くないシーマに面倒を押しつけた方が楽…。

ラングをアカネイア大陸一の狸親父とするならば、戦後処理の面倒をシーマに上手く押し付けたマルスはそれを上回る大妖怪…といった処でしょうか?
togege
2014年08月24日 09:37
>cvhiryuuさん
コメントありがとうございます。
ラングはマルスの正当性を主張するプロパガンダのために殊更悪く描かれているような気がしますが、本当にワルだった可能性もあります。実際に書いてみると、解釈の余地があり過ぎて難しいです。
あと、おっしゃる通りマルスはずっと上手です。悲しいことに、ラングもハーディンも彼の踏み台にされる運命なのです。
かなみん
2014年09月03日 21:49
このブログの連載を読み続けてると
私がゲームをやっていた頃に思っていた頼りないおぼっちゃまというイメージからどんどん離れて行きます・・・
恐ろしい子だよ

togege
2014年09月04日 08:08
>かなみんさん
コメントありがとうございます。
乱世の覇者ですから、世間知らずのおぼっちゃまではいられませんよね。マルスがおぼっちゃんキャラだとしたら、その背後で操るもっとワルい奴がいるはずですが、ゲーム中にはそれに該当する人物はいないんですよね。しいて言うなら、ジェイガンかモロドフ?モロドフを蹴落として、その地位を奪い取ったジェイガンとか?
ロギー
2014年09月05日 20:47
傀儡だったら英雄王なんて呼ばれませんよ。
おそらく暗黒戦争と英雄戦争が英雄王マルスを作り上げたんだと思います。
ただ、マルスはハーディンを利用したというよりは彼のやり方を学んだんだと思います(さしづめ信長や秀吉のやり方の良い所を学び修正した家康みたいな感じでしょう)

因みにハーディン政権は二年で潰れたようですが、本当にそうなんですかね。
確かに急激に力を伸ばしましたが、二年で滅ぶはありえません。
少なくとも英雄戦争は五年は続いた気がします。
歴史の改ざんで手早く終わらせマルスの偉大さをアピールしたとかありえます。
togege
2014年09月05日 22:49
>ロギーさん
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りハーディン政権は短過ぎるんですよね。パレス奪還から数えても、せいぜい3年…確かに不自然かもしれません。
マルスはハーディンの後継者という位置づけですね。信長~秀吉~家康的な…
あらた
2014年09月09日 20:02
ラングの起用は反ハーディン派でもあったジョルジュやミディアらアカネイア守旧派への牽制といった辺りが目的に
あったと思います。

ラング自身もオレルアンより格上のアカネイアの名門だけあって危険さはありますが、その家格故に他のアカネイア貴族に睨みをにらみを利かせられるのがメリットでしょうか。
togege
2014年09月09日 21:34
>あらたさん
コメントありがとうございます。
アカネイアでは危ういバランスの主導権争いが展開されています。
唯一絶対の権威ではあるものの、本人には全く力の無いニーナ。他を圧倒する勢力と実力はあるものの、その権力の正当性を100%ニーナからの支持に依存し切っているハーディン。暗黒戦争の痛手は小さいものの、裏切り者としての負い目のあるラング。暗黒戦争のダメージが大きくニーナを傀儡にするには力不足のミディアやジョルジュら守旧派貴族たち…
実に危うい、つかの間の平和です。

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