FE考察~グルニア最後の王・前編

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今回は同盟軍に敗れ、滅びへと向かうグルニアの話。前回『憎悪の暗黒戦争』でも述べたが、グルニアは大国アカネイアを完全に怒らせてしまった。勝ち目はゼロに近い。絶望的な状況に陥ってしまった。

【グルニアの混乱】
 息を吹き返したばかりでなく、その勢力を膨らませるニーナの同盟軍に対し形勢不利なグルニアは占領していたパレスを捨て、防衛線を後退させることに決めた。なぜそう言えるかは、パレスを守る軍勢があまりに少なすぎることと、メニディ砦では木馬隊のみが同盟軍と交戦していることから、パレスの残存部隊と足の遅い木馬隊は明らかに撤退までの時間稼ぎの為の捨て駒だからだ。同盟国グラも同じ扱いである。

 グルニアがアリティアを防衛ラインに設定するのは利に適っている。アリティアは位置的にドルーア、グルニア、マケドニア、カダイン、グラの連合各国の中心にあり、援軍が期待出来るからだ。アリティアを取られると、各国の連携を寸断され各個に撃破されるのみである。というか、実際そうなった。

 グルニアは戦略的最重要拠点であるアリティアを守るべく戦力を集結させた…のだが、肝心の黒騎士団が不在で、やはり『アリティアの戦い』でのグルニア騎兵の攻めは迫力不足であった。
 どうもちぐはぐである。最重要拠点であるアリティアの守りに多数の騎士を配置しながら黒騎士団は温存して、それでアリティアを取られるのだから。なぜこうなったのか?

 グルニアはこの時、ドルーア連合を堅持しようという意見と、本国の守りを固めようという意見アカネイアに降参しようという意見などがあって、足並みが揃っていなかった。バラバラだったのだ。当然だ。これらの意見をまとめて国の方針を決断すべき国王ルイがこの頃に病死していたのだから。グルニアは最悪のタイミングでリーダーを失ったのだ。

【グルニア最後の王ルイ】
 ルイ王は“ファイアーエムブレム”においてドルーアの脅威に怯え、その手先となった臆病者と評されているが、それは歴史の勝者たるアカネイア或いはアリティア視点の評価なので、実際はそうでなかった可能性もある。
 確かなのはドルーアと組んで宗主国アカネイアに反旗を翻す決断をしたこと、その戦乱の最中に病死したことである。
 案外ミシェイルのように反アカネイア感情と領土的野心が強く、あえてドルーアに味方するという禁じ手(アカネイアの属国としての価値観では)に手を染めたのかもしれない。しかしマムクートの皇帝を連合の盟主に祭り上げるのが何故かと考えた場合、やはり強国グルニアの騎士たちをまとめ上げるにはカリスマ性や実力が足りなかったのではないか。それがあればメディウスに膝を屈する必要は無い。

 ルイ王の家系の王位の根拠は建国王オードウィンの血統と宗主国アカネイアに承認された事、つまりアカネイアの後ろ盾によって支えられていた。しかし鼻息荒いグルニア貴族たちのアカネイア体制への不満は抑え切れなかった。ルイ王の王位は非常に危ういものとなっていた。
 そこで現れたのがメディウスの使いであるガーネフだった。ドルーアの後ろ盾でアカネイア体制に不満を持つグルニア貴族をまとめ、アカネイアを滅ぼしてしまえと。そうすればルイ王の王位は安泰だし、グルニア貴族たちの不満も解消され領土も増えるということだ。
 これまでアカネイアの後ろ盾で王位を得ていたルイ王だったが、それをドルーア帝国に切り替えたわけだ。臆病という評価も当たっているかもしれない。

【寝返る者たち】
 勢力を増した同盟軍だったが、ニーナ&ハーディンには確実にそして手早く勝利したい事情があった。(参考:女王ニーナの征戦)落ち目とはいえグルニアは侮りがたい敵。当然、謀略による弱体化工作はしていたに違いない。色々手は尽くしただろうが、最も大きなものでは『グルニア、マケドニア、カダイン、グラは邪悪で強大な地竜王メディウスの恐怖によって手先にさせられた犠牲者である。』というプロパガンダを流したことである。
 実態としてはそうではないだろうが、アンリの時代の物語を聞いて育った大陸の人間たちの多くは信じ、ドルーアの脅威を過大評価すると共にアンリの物語の再現に熱狂した。

 同盟軍はこの戦争をアカネイア体制への反逆ではなく、アンリの物語の再現であり、竜族と人間の覇権争いの決着をつける聖戦だと位置づけた。
 こうすることでドルーア連合に対する勝利をより確実なものにするとともに、ドルーアに組した人間の寝返る余地を作ったのだ。またメディウス討伐を憎悪の連鎖の終わりにする狙いもあった。

 このプロパガンダを広めるのに特に活躍したのはタリスのシーダ姫とマケドニアから寝返ったミネルバ一派だった。そしてマルスは戦後、暗黒戦争の記録『ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣』を発表し、このプロパガンダを強化した。まあマルスはこのベストセラーとなった戦記とプロパガンダを別な狙いで活用するのだが…

 ロレンス将軍などは目論見通りの形で同盟軍に寝返った。他にも神器『パルティア』と『メリクル』をあっさり取り戻せたのはグルニアのかなり位の高い人物の手引きがあったとしか思えない。
 
【黒騎士カミュの噂】
 グラでカミュらしき男が同盟軍のマルスと密会したという噂がある。この時に司祭ボアのものであったトロンの書が返還され、ニーナへの伝言を伝えたとされる。後の“ファイアーエムブレム”ではこの男をカミュだと明記はしなかったものの、真実めいたニュアンスで伝えた。
 事の真偽はともかく同盟軍はこの噂を否定はしなかった。グルニア最強の将軍がアカネイア寄りの人物だという噂が流れるのは都合が良いからだ。パレス占領時にニーナと接点があり、彼女を“逃がした”のもこの噂に真実味を与えている。この噂は少なからずグルニアを揺さぶっただろう。

 しかしこの“カミュらしき男”の行動はこの先の戦局になんら影響をもたらさなかった。それどころかアカネイアから奪った神器『グラディウス』を手にアカネイアに徹底抗戦したカミュの行動とも矛盾している。あるいはグラでのやりとりとグルニアでの最終決戦との間に何かがあって、カミュを徹底抗戦に追い込んだのだろうか?

 

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この記事へのコメント

togege
2015年03月29日 21:11
 長らくお待たせしました。
 混乱したグルニアの中で、ドルーア連合保持を望むのがルイ王で、アカネイアとの和睦を模索する現実主義者がロレンス、独自路線でグルニアの誇りに殉じた理想家がカミュというイメージです。最初に倒れたのがルイ王派でアリティアを取られた時点でドルーア連合は実質崩壊しました。
cvhiryuu
2015年03月31日 20:06
今回の考察も興味深く拝読させていただきました。

海音寺潮五郎氏が加藤清正を「師団長級の軍人、知事級の政治家としては最高の能力を兼ね備えていたが、それより規模の大きい仕事を処理する能力は皆無」と評していましたが、カミュは正にそのようなタイプなのでは無いでしょうか?

 グルニア王国も封建制ですので、黒騎士団は大領主カミュの兵力を中核として、その与力領主の兵力を併せて編制されていると考えられます。従って中核部隊の責任者であるカミュが停職になると碌に機能しないのではないでしょうか?何しろ、兵士はグルニアという国家ではなく、カミュという領主に忠誠を誓う領民や家臣なのですから。

 決戦時のカミュの動きもやはりグルニアより自領の繁栄重視という印象があります。

カミュは黒騎士団の主力と共にグルニア王城に立て籠もっていますが、土壇場でカミュは捕虜になっていたエストを解放、メリクルを持たせて脱出させると言う手に出ます。

エストが逃げた先はレナの母方の実家のある村、領主はカミュと設定されています!カミュ自身はグルニアという国や彼を買って勧誘してきたミシェイルへの義理を立てるポーズを取っていますが、国の捕虜を自分の領民の戦後補償の為に私用しているのですから土壇場で寝返ったロレンスと五十歩百歩です。

 戦争が起きなければ気さくで人のいい大領主として人畜無害な人物でしたが、戦時の公僕としてはニーナ王女の独断解放や最終決戦時の捕虜の私用等々の問題人物、と言うのがカミュの総合印象です。彼を監督できる上司が居れば優れた戦術家・武人として有益だったでしょうが、そのような人物は無論、彼の代役すら用意できなかった点がグルニア王国の限界と言えると思えます。
togege
2015年03月31日 21:07
>cvhiryuさん
コメントありがとうございます。
仰る通り、グルニアに限らずこの世界の兵士達は国家ではなく直接の領主に従って戦っていたのだと思います。どの国も騎士達の掌握には苦労しています。マルスはその武威とファイアーエムブレムで領民は領主に、領主は王家に忠義を尽くすべしという価値観を刷り込もうとしているのです。
エストはきっとハニートラップの名手という説を考えています。2部で失敗したのはエイベル将軍がイケメン騎士アベルの方を…
でらえもん調査局
2015年11月23日 03:14
もう1年更新されていませんが、辞めてしまったのでしょうか?
くそまじめ
2017年03月18日 19:45
グルニア王に機を見てドルーアを裏切る気概がない以上、グルニアに利用価値がなくなったらドルーアはグルニアを切り捨てますよね(小声)。

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